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二次式

二次式と二次形式

一変数の二次式といえば𝑎𝑥2+𝑏𝑥+𝑐の形をした式である。 ただし、𝑏2を𝑏で置き直して、一次の項に係数2をつけた𝑎𝑥2+2𝑏𝑥+𝑐の形で考えることも多い。

𝑁変数𝒙=(𝑥1⋮𝑥𝑁)の二次式は𝑁次正方行列𝐴と𝑁次ベクトル𝒃、スカラー𝑐を用いてスカラー積⋅により

𝐴𝒙⋅𝒙+2𝒃⋅𝒙+𝑐

の形で表される式である。 ここで𝑖,𝑗=1,…,𝑁に対して𝑥𝑖𝑥𝑗=𝑥𝑗𝑥𝑖であることから

𝐴𝒙⋅𝒙+2𝒃⋅𝒙+𝑐=𝐴+𝐴𝖳2𝒙⋅𝒙+2𝒃⋅𝒙+𝑐

とできるため、𝐴は対称行列であると考えても差し支えない。

さらに二次式の中でも一次の部分2𝒃⋅𝒙と定数項𝑐がないものを二次形式と呼ぶ。 つまり、𝑁変数𝒙=(𝑥1⋮𝑥𝑁)の二次形式は𝑁次対称行列𝐴を用いて

𝐴𝒙⋅𝒙

の形で表される式である。

二次式と平方完成

平方完成とは一変数の場合には𝑎≠0の時に

𝑎𝑥2+2𝑏𝑥+𝑐=𝑎(𝑥+𝑏𝑎)2+𝑐−𝑏2𝑎

と変形することをいう。 二次式の場合には以下の定理が成り立つ。

定理 1 (平方完成)

𝐴を𝑁次対称正則行列で𝒃,𝒙を𝑁次ベクトル、𝑐をスカラーとする時、

𝐴𝒙⋅𝒙+2𝒃⋅𝒙+𝑐=𝐴(𝒙+𝐴−1𝒃)⋅(𝒙+𝐴−1𝒃)+𝑐−𝐴−1𝒃⋅𝒃

が成り立つ。

例 2

3つの実数𝑢1,𝑢2,𝑢3に対して

𝐸(𝑢1,𝑢2,𝑢3)=(𝑢1−𝑢2)2+(𝑢2−𝑢3)2+(𝑢3−𝑢1)2=2𝑢12+2𝑢22+2𝑢32−2𝑢1𝑢2−2𝑢2𝑢3−2𝑢3𝑢1

とおく、このとき6つの実数𝑢1,𝑢2,𝑢3,𝑣1,𝑣2,𝑣3に対して、

𝐸(𝑢1,𝑣2,𝑣3)+𝐸(𝑣1,𝑢2,𝑣3)+𝐸(𝑣1,𝑣2,𝑢3)≥35𝐸(𝑢1,𝑢2,𝑢3)

が成り立つことを示す。

左辺を𝐸とおいて𝑣1,𝑣2,𝑣3についての二次式とみなすことで

𝐸=(4−1−1−14−1−1−14)(𝑣1𝑣2𝑣3)⋅(𝑣1𝑣2𝑣3)−2(𝑢2+𝑢3𝑢3+𝑢1𝑢1+𝑢2)⋅(𝑣1𝑣2𝑣3)+2(𝑢12+𝑢22+𝑢32).

ここで𝐴=(4−1−1−14−1−1−14)の逆行列の計算が必要になり、掃き出し法を実行してもよいが、ここでは以下のように考えてみよう。 つまり、𝑋=(111111111)とおくと、𝐴=5𝐼−𝑋で𝑋2=3𝑋なので𝐴2−7𝐴+10𝐼=𝑂、つまり

𝐴−1=−110(𝐴−7𝐼)=110(2𝐼+𝑋)

がわかる。 また、𝐴は正定値であることに注意する。 ここで𝒖=(𝑢1𝑢2𝑢3), 𝒗=(𝑣1𝑣2𝑣3)とおくと、

𝐸=𝐴𝒗⋅𝒗−2(𝑋−𝐼)𝒖⋅𝒗+2‖𝒖‖2.

平方完成して、𝐴は正定値であることから

𝐸≥2‖𝒖‖2−𝐴−1(𝑋−𝐼)𝒖⋅(𝑋−𝐼)𝒖

である。 ここで

(𝑋−𝐼)𝐴−1(𝑋−𝐼)=110(𝑋−𝐼)(2𝐼+𝑋)(𝑋−𝐼)=15(3𝑋+𝐼)

なので、

𝐸=𝐸(𝑢1,𝑣2,𝑣3)+𝐸(𝑣1,𝑢2,𝑣3)+𝐸(𝑣1,𝑣2,𝑢3)≥15(9𝐼−3𝑋)𝒖⋅𝒖=35𝐸(𝑢1,𝑢2,𝑢3)

が得られる。