極限
論法
ある実数が正でないつまり以下であることを直接示すのが難しい時でも、条件を緩和していくらでも小さくできる正の数よりも小さいことが言えたらその数は正でないと結論付けられる。 このような論法を論法と呼ぶ(ことにする)。
次の定理はそのような論法の正当性を保証する。
定理 1 (論法1)
, を実数とするとき次が成立する。
- 任意の正の数に対してならばである。
- 任意の正の数に対してならばである。
注意 2
この定理はが成り立つ時でも使えるが結論はであって、その場合でもは得られない。 例えばの時、だがではない。 あくまでも等号付き不等号のみが従う。証明
最初の内容のみ証明する。 背理法でもしとするとと取ることができ、
よって、で両辺を割ることでを得て、これはであることに矛盾する。 したがってである。
二つ目はとを入れ替えて同じ議論をすればよい。
特に次のバリエーションがある。
定理 3 (論法2)
, を数とするとき、 任意の正の数に対してならばである。証明
は非負の実数なので、定理 1 よりでがわかり、これはである。数列の極限
数列の極限は前節の論法によって次のように定義される。
定義 1 (数列の極限)
数列がで数に収束するあるいはがのでの極限であるとは
任意の正の数に対して、あるが存在して、以上のすべてのに対してが成り立つ
ことを言う。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
また、この時 ()やと書くが、しばしばあるいはやなどと省略される。
数列が何らかの数に収束する時この数列は収束するといい、そうでない時発散するという。
例 2
を定数として定数列の極限はである。この定義の中で「あるが存在して、以上のすべてのに対して」の部分はしばしば「十分大きなすべてのに対して」と略し、論理記号ではと表す。 つまり、は
とも表される。 このテキストではこの記号は極限に関係する上記の意味でのみ使い、必ずを伴う。 のようには用いないので注意する。 また、とは一般には交換できないので注意する。
なお、であることから数列がに収束することは実数列がに収束することと同値である。
それはさておき、極限は存在したら一意である。
命題 3
数列が収束したらその極限は一つしかない、つまり数列が数に収束し数にも収束したとするとである。証明
を任意の正の数として、を示す。 ここで、がに収束することからあるが存在して以上の任意のに対してであり、 がに収束することからあるが存在して以上の任意のに対してである。 よってとおくと、三角不等式より
ここで定理 3 よりと結論付けられる。
発散の中でも次の二つは後でわかるように収束に近い性質を持っている。
定義 4 (数列の発散)
を実数列とする。
実数列がでに発散するあるいは拡大実数列がでに収束するとは
任意のに対して、十分大きいすべてのに対してが成り立つ
ことを言う。 この条件を論理記号で書くと以下になる。
また、この時 ()やと書く。
実数列がでに発散するあるいは拡大実数列がでに収束するとは
任意のに対して、十分大きいすべてのに対してが成り立つ
ことを言う。 この条件を論理記号で書くと以下になる。
また、この時 ()やと書く。
- がで収束せずにもにも発散しない時、は振動するという。
極限の具体的な計算において基礎となるのは次の事実である。
命題 5
数列はでに発散する。このことは自明のように思えるが、数列の添字のは自然数なのに対して数列の項は実数であり、自然数と実数の差を埋める必要がある。
証明 (命題 5 の証明)
とする。 天井を使って整数とおくことで、はを満たす自然数である。 この時以上の自然数に対してより、数列はでに発散することがわかる。以下に述べる収束する数列の性質は今後の議論をするうえで非常に重要である。
定理 6
収束する数列は有界である。証明
数列が数に収束するとする。 この時、収束することの定義でとすることで、ある自然数が存在して以上のすべての自然数に対してであるので、三角不等式から
が成り立つ。 未満の添字はの有限個なので、
とおくとは実数で、任意の自然数に対してである。 つまりは有界であることが示された。
命題 7 (極限と大小関係)
, を実数列とし、それぞれ実数, に収束するとする。 ここでもし各に対してが成り立つならばである。注意 8
この命題はの時でも適用できるが、結論はであって、その場合でもは得られない。証明
を任意の正の数としてを示す。 ここで、がに収束することからあるが存在して以上の任意のに対してであり、 がに収束することからあるが存在して以上の任意のに対してである。 ここでとおくと、仮定より
よって定理 1 よりと結論付けられる。
命題 9 (はさみうちの原理)
, を実数列とし、それぞれ実数, に収束するとする。 さらにを実数列として各に対してが成り立ちの時、はに収束する。この命題をもちいれば極限値の決定に加えて収束すること自体いえて便利である。
証明
を任意の正の数とする。 ここで、がに収束することから十分大きなすべてのに対してであり、 がに収束することから十分大きなすべてのに対してである。 ここで十分大きなすべてのに対して、仮定から
でまとめると
なので、はに収束する。
系 9.1
を数列でを数、をに収束する実数列とする。 ここでもし各に対してが成り立つならば、はに収束する。証明
であり、, はに収束することから、はさみうちの原理(命題 9)より、実数列はに収束する。 したがってはに収束することが示された。命題 10 (極限と四則演算)
, をそれぞれ数, に収束する数列とする。 を定数とする。 この時、以下が成り立つ。
- .
- .
- .
- .
- の時、.
- .
- .
- .
注意 11
証明でも触れるが、五つ目の商の極限についてだと十分大きいすべてのについてであり、そのようなに対してを考えることに注意する。これらのうち極限の定義に立ち返って証明されるのは最初の二つで、他ははさみうちの原理を使うことで見通しよく証明できる。 また、二つ目は四つ目の特殊な場合()であるが、先に二つ目を示すことでその内容を使って四つ目を示す。
証明
を固定する。 より極限の定義でとしてとして取れば、十分大きなに対してである。 より同様にして、十分大きなに対してである。 したがって、三角不等式より十分大きなに対して、
よってである。
の時、, なのでであるため、の場合を考えればよい。 より極限の定義でとしてとして取れば、十分大きなに対してである。 よって、十分大きなに対して、
よって、である。
二つ目でとして、としてとして適用すればである。 よって、一つ目より
である。
計算すると
ここで、は収束するので定理 6 より有界であるからある実数が存在してすべてのに対してとできることから、
したがって一つ目と二つ目を使うことで右辺はに収束することがわかる。 よって、系 9.1 よりが結論付けられる。
まず、より極限の定義でとしてとして取れば、十分大きなに対してである。 したがって三角不等式より、
よって特にである。 また、計算すると
ここで一つ目と二つ目を使うことで右辺はに収束することがわかる。 よって、系 9.1 よりが結論付けられる。
三角不等式より、
なので、系 9.1 よりがわかる。
一般に実数, に対して
が成り立つことに注意する。 よって
である。
一般に実数, に対して
が成り立つことに注意する。 よって
である。
これらの計算はに発散する(拡張実数の範囲で収束する)場合でもある程度拡張できる。 以下では特に重要な場合を示す。
命題 12
を実数列とする。
- ならばが成り立つ。
- ならばが成り立つ。
- 十分大きい任意のに対してかつならばが成り立つ。
- 十分大きい任意のに対してかつならばが成り立つ。
証明
一つ目を示す。 まず、の定義でとすることで十分大きいに対してであることに注意する。 を固定する。 この時、の定義でとすることで十分大きいに対してである。 よって、十分大きいに対して
よって、である。 二つ目は同様にして証明できる。
三つ目を示す。 を固定する。 この時、の定義でとすることで十分大きいに対してである。 ここでもう一つの仮定より十分大きいに対してであるから、
よって、である。 四つ目も同様にして証明できる。
拡大実数のところで紹介した不定形, , , 以外の極限はを含んでいても基本的に正当化される。
以上を用いると様々な数列の極限を求めることができる。
例 13
において、
が成り立つ。 またこれを用いると
などと計算される。
同じに発散する数列でも発散の速度は
の順に早くなる。 つまり、左にあるものをそれより右にあるもので割って得られる数列はに収束する。
命題 14 (等比数列の極限)
を実数とする。 この時、のでの極限は以下のようになる。
- の時、である。
- の時、である。
- の時、である。
- の時、は発散する(に発散もしない)。
証明
の時、とするが取れ、二項定理よりにおいて
ここで最右辺はでに発散するので、である。
- の時、である。
- の時、まずの時、である。 その他の場合はなので、に注目すれば最初に示したことよりなので、よってである。
- の時、はが偶数の時は、が奇数の時はとなるので収束しない。
命題 15
数列に対して、実数列があるより小さい実数に収束したとする。 この時、である。証明
よりとおくとでを公比とする等比数列に帰着させたい。 そこでとおくと、十分大きいすべてのに対して
つまり、である。 したがってこれを繰り返し用いることで、
よって、より命題 14 から最右辺はに収束するので、はさみうちの原理からである。
例 16
を実数として、との発散の速さについて、
よって、の方が早く発散する。
単調数列の極限
一般に数列は収束するとは限らないがそれを保証する単調収束定理がある。 その中で重要になる概念が次の単調性と有界性である。
定義 1 (数列の単調性)
を拡大実数列とする。
任意のに対してが成り立つ、つまり
のとき、は単調増加という。
任意のに対してが成り立つ、つまり
のとき、は単調減少という。
例 2
は単調増加であり、は単調減少である。定義 3 (数列の有界性)
を実数列とする。
- 集合が上に有界の時、すなわちある実数が存在して任意のに対しての時、は上に有界という。
- 集合が下に有界の時、すなわちある実数が存在して任意のに対しての時、は下に有界という。
- 上に有界かつ下に有界の時、は有界であるという。
注意 4
実数列が有界であることとある実数が存在して任意のに対してが成り立つことは同値である。定理 5 (単調収束定理)
を実数列とする。
- が単調増加かつ上に有界のとき、は実数の範囲で収束する。
- が単調減少かつ下に有界のとき、は実数の範囲で収束する。
を拡大実数列とする。
- が単調増加のとき、は拡大実数の範囲で収束する。
- が単調減少のとき、は拡大実数の範囲で収束する。
注意 6
証明を見ればわかるが実は極限は、が単調増加のとき上限で、が単調減少のとき下限である。 有界性の仮定は極限を実数の範囲に収めるための条件である。証明
が単調増加かつ上に有界の場合を証明する。 まず、が上に有界であることから集合には上限が有限の実数として存在する。 を固定すると、上限の同値な条件からを満たすが存在する。 ここで、が単調増加であることから以上のに対して、またであるから、である。 したがって、が得られ、特には収束する。
が単調増加かつ上に有界でない場合は、を示す。 上に有界でないため任意のに対して、あるが存在してであり、が単調増加であることから以上のに対してなので、である。
単調減少の場合も同様に示される。
有理数からなる集合でも上限・下限が無理数になりうるように、有理数列でも無理数に収束することがありうる。 そのため有理数は極限操作について閉じていないが、実数だとある程度閉じていることになる。 実は自然数列の極限は存在したら自然数であり、整数列では整数である。 極限操作について閉じることは自然数や整数では成り立っていたものが有理数で崩れてしまい、実数になってまた成り立つようになっている。
このような数列の収束を保証する定理を用いると、次のような手法で数列の極限を求めることができる。
つまり、関数が与えられたときに漸化式
を考える。 これは初期値が与えられたら、に対してでが(数学的帰納法から)求まり、数列が定まりその極限を考える。 ここでもしが何らかの数に収束したとする。 後で示す命題からもに収束することと、さらにもしがに収束したとする(これを保証するのが関数の連続性である)と
が成り立つ。 式 (0.2) はについての方程式とみなすと漸化式式 (0.1) の極限方程式と呼ばれ、これに解がただ一つ存在する場合は極限はその解以外にあり得ないので極限が求まる。
つまり、単調収束定理などで収束を保証して極限方程式の解の一意存在をいえば極限が求まる。 これによって、一般項を求めることが難しい問題でも極限を計算することができる(ことがある)。
例 7
として、漸化式
を考える。 これはの根つまりをニュートン法によって求める際に現れる漸化式である。
とするとき、算術平均・幾何平均の不等式からに対して
で特には下に有界である。 さらに
より、は単調減少である。 よって単調収束定理よりは何らかの実数に収束する。 は極限方程式
を満たし、これを解くとである。 ここでなので命題 7 よりからのみ適する。 よって、 ()が結論付けられる。
この問題は極限方程式の解がであることからを示すために、
と計算することで
より同じ結論を得ることができる。 後者の解法の方が収束の速さまでわかる一方、前者の方が計算が楽といえる。
例 8
漸化式
を考える。 これはのような面白い項からなる数列を作る。
ならばかつなので、とすると任意のに対してで特には上に有界である。 さらに
よりに注意して、は単調増加である。 よって単調収束定理よりは何らかの実数に収束するが極限方程式
を満たしこれを解くとである。 よって、 ()が結論付けられる。
この問題も前回の問題同様に、極限方程式の解がであることからを示すために、
と計算することで
より同じ結論を得ることができる。
部分列の極限
の値を交互に取る数列はそれ自身は極限の定義に照らし合わせるとどのような数にも収束しない(発散する)が、 偶数番目の項や奇数番目の項に制限すればに収束するので、それらを極限のようなものとして扱いたい場合がある。 そのような場合に重要になる概念が部分列である。
定義 1 (部分列)
を数列とする。 ここで、を自然数列であって、各に対してが成り立つ、つまり
のとき、のうち項をに制限して得られる数列をの部分列という。
部分列が何らかの数に収束する時、もとの数列はに部分列収束するあるいはがの部分列極限であるという。
注意 2
- として取るとなので、自身はの部分列であり、特に部分列は常に存在する。
- 部分列極限は部分列の取り方によって変わるので一意とは限らない。 また、部分列は収束するとは限らないので存在するとも限らない。
例 3
- 数列に対してが偶数に制限するとでに部分列収束し、が奇数に制限するとでに部分列収束することがわかる。
- 実は数列の部分列極限全体からなる集合は閉区間になる(三角関数の周期が無理数であることに注意する)。
もとの数列が収束するならば部分列は同じ極限に収束する。
命題 4
数列が数に収束するとすると、任意の部分列もに収束する。証明
定義からがわかることに注意する(特に ()である)。 より、に対して、が存在して以上の任意のに対してとなる。 ここでとおくと任意の以上のに対して、なので、である。 よって、である。注意 5
これを用いればのときなどがいえる。部分列極限の中でも最大のものと最小のものはそれぞれ上極限、下極限と呼ばれる。
定義 6 (上極限・下極限)
を拡大実数列とする。
上限・下限を使って定義される次の拡大実数をのでの上極限という。
上限・下限を使って定義される次の拡大実数をのでの下極限という。
上極限・下極限は上限・下限で定義されるので(を認めれば)必ず存在するという利点がある。
注意 7
自然数に対して以上の自然数の集合はが増えると小さくなるのでは単調減少である。 したがって上極限の定義の中の下限は極限にかえることができる。 下極限も同様で、つまり
が成立する。
また、定義からである。 この等号が成立するための条件が極限が存在することになる。
命題 8
を拡大実数列とする。
- が収束するならば、である。
- ならばはその値に収束する。
証明
前半はすぐわかるので証明を省略する。 後半について任意のに対して
であり最左辺と最右辺がともにに収束するので、 はさみうちの原理よりである。
命題 9
とを十分大きい任意のに対してを満たす拡大実数列とする。 この時、以下が成り立つ。
- .
- .
この命題は命題 7 を一般化したものになっている。
証明
上極限・下極限の定義から容易に証明できるので詳細は省略する。命題 10
を拡大実数列とするとき、以下が成り立つ。
- となる部分列が存在する。
- となる部分列が存在する。
証明
上極限のみ示す。 がでないつまり有限の実数の場合を証明する。 各に対して実数を定めるとであり、であることに注意する。 よってとなる以上のが存在するので、自然数列を
で定義すると、はの部分列であり、
を満たす。 最左辺も最右辺もに収束するので、はさみうちの原理より部分列もに収束する。
の場合はとして同じようなことをすればよい。 下極限についても同様に証明できる(詳細省略)。
特に次が従う。
定理 11 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理)
有界な実数列は収束する部分列を持つ。証明
実数列の上極限はその定義からが有界だとでないことがわかる。 よって、命題 10 を用いればは実数に収束する部分列が存在することがわかるので、定理が示された。定理 12
を数列、を数とする。 もしの任意の部分列がに部分列収束する、つまりに収束する部分列が存在するとき、はに収束する。証明
実数列を考えると命題 10 より上極限に収束する部分列が取れる。 仮定よりはに部分列収束するのでとなるの部分列が存在する。 はにも収束すると言え、極限の一意性からである。 したがって、より、はに収束し、つまりはに収束する。以上の内容をもとに漸化式で定まる数列の極限について一般論を述べる。
定理 13
を実数の集合、, を関数とする。
, , が
- 任意のとに対して、つまりを満たす。
- は上に有界である。
- 任意のとに対してである。
- 任意の ()とに対してとなる。
- を満たすは一意である。
を満たす時、漸化式によって任意のに対して数列 ()が定義でき、は上に有界かつ単調増加より収束し極限をとおくと、は極限方程式の一意解でありである。
, , が
- 任意のとに対して、つまりを満たす。
- は下に有界である。
- 任意のとに対してである。
- 任意の ()とに対してとなる。
- を満たすは一意である。
を満たす時、漸化式によって任意のに対して数列 ()が定義でき、は下に有界かつ単調減少より収束し極限をとおくと、は極限方程式の一意解でありである。
注意 14
三つ目の仮定は一般には外せない。 例えば, とおくと、三番目以外の仮定を満たすが、 となりのときは発散する。数列の極限の最後に次のような極限に関する定理を紹介する。
定理 15
数列がに収束するとする。 この時、
が成り立つ。
注意 16
がに発散する時でも同様の結果が成り立つ。この定理の証明にはある程度極限の定義に立ち戻る必要がある。
証明
三角不等式よりに対して、
であることに注意する。 に対して、であることから、以上のすべてのに対してとなるようなが存在するので、に対して、
である。 ここでとすると最右辺はに収束するので、
で、は任意の正の数なので、ほしかった極限の式が得られる。
関数の極限
この節では実数の集合上で定義された実数値関数を考える。 この時、論法によりの極限を定義する。 の極限を定義するにあたって、実数は任意の正の数に対して、を満たすの存在を暗に仮定している。 このようなをの極限点という。 として閉区間から有限個の点を取り除いて得られる集合を想定していてその場合ははもとの閉区間の点なら何でもよいが、 のような集合の場合は極限点はのみでありそれ以外の点では極限を考えられないことに注意する。
定義 1 (関数の極限)
を実数の集合上で定義された実数値関数、をの極限点、を実数とする。
関数がで実数に収束するあるいはがのでの極限であるとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
関数がで正の無限大に発散するとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
関数がで負の無限大に発散するとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
ここで「あるが存在して、を満たす任意のに対して」の部分はしばしば「でなく十分に近い任意のに対して」と略し、論理記号ではと表す。
はと同値である。
定義 2 (関数の無限大での極限)
を実数の集合上で定義された実数値関数、を実数とする。
関数がで実数に収束するあるいはがのでの極限であるとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
関数がで正の無限大に発散するとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
関数がで負の無限大に発散するとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
での極限は同様にして定義される(詳細省略)。
ここで「あるが存在して、を満たす任意のに対して」の部分はしばしば「十分大きい任意のに対して」と略し、論理記号ではと表す。 省略してしまったが「あるが存在して、を満たす任意のに対して」の部分はしばしば「十分小さい任意のに対して」と略し、論理記号ではと表す。
関数がで(も含む)何らかの実数に収束する時はで収束するといい、そうでない時は発散するという。 収束せず正の無限大にも負の無限大にも発散しない時、はで振動するという。
数列同様、極限は一意であることに注意する。
また、数列の時同様以下が成立する。
命題 3 (はさみうちの原理)
関数, , が、でなく十分に近い任意のに対して
とが成り立つ時、 ()である。
系として関数に対して、でなく十分に近い任意のに対して
ででとなる実数値関数が存在する時、 ()である。
命題 4 (極限と演算)
関数, がで, を満たしているとする(も含む)。 この時、以下が成り立つ。
- .
- .
- .
- の時.
- .
- .
- .
なお、これらは不定形以外ならでもよい。
関数の極限が数列のそれと大きく異なる点の一つに極限を取る方向が一通りではないことがある。 先述の極限の定義は点に近づける様々な方向をまとめて考えているが、ここでは数直線の右側(正の側)からと左側(負の側)からとで分ける。
右側から近づけるために、実数が任意の正の数に対して、を満たすが存在するとき、をの右側極限点といい、 左側から近づけるために、実数が任意の正の数に対して、を満たすが存在するとき、をの左側極限点ということにする。
定義 5 (片側極限)
を実数の集合上で定義された実数値関数、をの右側極限点、を実数とする。
関数がで実数に収束するあるいはがのでの右側極限であるとは
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ
ことをいう。 なお、この条件を論理記号で書くと以下になる。
この時、 ()やと書く。
関数がで正の無限大に発散する( ()や)ことは同様に定義される(詳細省略)。 関数がで負の無限大に発散する( ()や)ことは同様に定義される(詳細省略)。
をの左側極限点とするときでの極限(左側極限)は同様にして定義される(詳細省略)。
右側極限点かつ左側極限点な点をの両側極限点という。 両側極限点は極限点であることに注意する。 次の命題によって、通常の極限を求めるには右側極限と左側極限が一致することを示せばよい。
命題 6
を実数の集合上で定義された実数値関数、をの両側極限点とする。 極限が存在するための必要十分条件は右側極限と左側極限が存在して両者の値が一致することである。 またこの時、
が成り立つ。
証明
極限の定義からわかる(詳細省略)。連続関数
関数に対してそのグラフがつながっているという連続性は極限を使って定義される。
定義 1 (連続性)
を実数の集合上で定義された実数値関数として、をの極限点でありはを元として含むとする。 ここでがでに収束する、つまり
の時、関数は点であるいは関数は点で連続であるという。
同様に、を実数の集合上で定義された実数値関数として、をの右側極限点でありはを元として含むとする。 ここでがでに収束する、つまり
の時、関数は点であるいは関数は点で右連続であるという。
を実数の集合上で定義された実数値関数として、をの左側極限点でありはを元として含むとする。 ここでがでに収束する、つまり
の時、関数は点であるいは関数は点で左連続であるという。
注意 2
集合上の関数が点で連続であることをまとめなおすと
任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対して(十分に近い任意のに対して)が成り立つ
となる。
関数の極限の性質を引き継いで連続性について以下が成立する。
命題 3 (連続と演算)
関数, が点で連続とする。 この時、点に対して以下の値を対応させる関数も点で連続である。
- .
- .
- .
- の時、.
- .
- .
- .
右連続・左連続についても同様のことが成り立つ。
命題 4
関数が両側極限点で連続であるための必要十分条件は関数が点で右連続かつ左連続であることである。命題 5 (連続と合成関数)
関数が点で連続で関数が点で連続である時、 合成関数は点で連続である。次の命題は連続性が点の列を表す数列(点列)を使った表現で特徴づけられることを主張する。
命題 6 (点列連続性)
関数が点で連続であることは
に収束する任意の点列に対してが成り立つ
ことと同値である。
証明
がで連続として、に収束する点列を考える。 に対して、連続性からあるが存在してを満たす任意の点に対してである。 さらにこのに対して、数列の収束からが存在してを満たす任意のに対してである。 よって、としてを考えることで、十分大きいすべてのに対して、つまりを得る。
逆にに収束する任意の点列に対してのとき、の連続性を示すが、背理法で連続でなかったとする。 この時、あるが存在して、任意のに対してかつとなる点が存在する。 ここでごとにを考えて上記の条件を満たすが存在することからそのうち一つをとおく。 そうして点列を定めるとき、なのではに収束する。 一方でよりはに収束しないので仮定に矛盾する、よってはで連続である。
この命題の前半部分は特に重要で以降の議論で頻繁に用いられる。 後半部分はこのテキストではあまり用いられないが、連続性を証明するときに便利である。
集合上のすべての点で連続な関数を連続関数という。
定義 7 (連続関数)
を実数の集合上で定義された実数値関数として、の点はすべての極限点であるとする。 ここで、すべての点でが連続である時、関数は集合上の連続関数であるという。注意 8
「の点はすべての極限点である」を満たす集合として区間やいくつかの区間の和集合が挙げられる。例 9
を実数定数として、定数関数と恒等関数はともに上の連続関数である。直ちに以下が成立する。
命題 10 (連続関数と演算)
関数, を集合上の連続関数とする。 この時に対して以下の値を対応させる関数も集合で連続である。
- .
- .
- .
- すべてのでの時、.
- .
命題 11 (連続関数の合成)
関数が集合で連続で関数が集合で連続である時、 合成関数は集合で連続である。中間値の定理、最大値最小値定理、逆関数の定理
ここでは有界閉区間上の連続関数特有の定理として中間値の定理と最大値最小値定理を示す。
定理 1 (中間値の定理)
関数を有界閉区間上の連続関数とする。 この時、任意のに対して
となる点が存在する。
また、の時はと取れる。
系 1.1 (不動点型の中間値の定理)
関数を有界閉区間からそこへの連続関数とする(つまりである)。 この時、を満たす不動点が存在する。定理 2 (最大値最小値定理)
関数を有界閉区間上の連続関数とする。 この時、関数は上で最大と最小を持つ。この二つの定理はともに区間を左と右に二等分し、所望の点(中間値の定理ならば、最大値最小値定理ならば最大点・最小点)が入る区間を選ぶという操作を繰り返し行い一点に縮小させるという論法で証明される。 次の補題はその議論を支えるものである。
補題 3 (区間縮小法)
実数列とが各に対してとを満たすとする。 この時, となる実数が存在する。
特に, を、各に対してとして, または, が成立するように定義する時、, となる実数が存在する。
証明
仮定からは単調増加かつ上に有界なので極限が存在し、は単調減少かつ下に有界なので極限が存在する。 ここでであるが、もう一つの仮定よりであり、これをとおけばよい。
後半部分は, の定義からとが言えるのでが存在することが示される。
証明 (中間値の定理の証明)
の場合を示す。 とする。 ここで, を次のように定める。 まず、, とする。 に対して, が定義できた時として、
- の時、, とおき、
- の時、, とおく。
この時、常にであり、補題より, はともにあるに収束する。 よってが連続関数であることからより、ほしかった式を得る。
の場合も同様に示される。 の時はなのでと取れる。
注意 4
この証明は方程式の解の構成の計算可能なアルゴリズムにもなっており、二分法と呼ばれる。証明 (最大値最小値定理の証明)
最大を持つことを示す。 ここで, を次のように定める。 まず、, とする。 に対して, が定義できた時として、
- の時、, とおき、
- の時、, とおく。
この時、常にであり、補題より, はともにあるに収束する。
ここでが連続関数であることから任意のに対して十分に近い任意のに対してより、 あるが存在して、任意のに対してである。 よってでは任意よりで関数は点で最大になることが示された。
最大を持つことも同様に示される。
例 5
についての方程式を考える。 とおくとこれは連続関数で、, より中間値の定理からは少なくともとの間に実数解をもつ。実数に対して実数値を対応させる関数が逆関数をもつことを保証するのが以下に定義する(狭義)単調性である。
定義 6 (関数の単調性)
を区間上の実数値関数とする。
- 任意のを満たすに対してが成立するときは上で狭義単調増加するという。
- 任意のを満たすに対してが成立するときは上で広義単調増加するという。
- 任意のを満たすに対してが成立するときは上で狭義単調減少するという。
- 任意のを満たすに対してが成立するときは上で広義単調減少するという。
広義単調増加・広義単調減少の「広義」は省略される。
定理 7 (単調関数の逆関数)
を有界閉区間上の連続関数とする。
- が上で狭義単調増加するとき、逆関数が有界閉区間上の狭義単調増加する連続関数として存在する。
- が上で狭義単調減少するとき、逆関数が有界閉区間上の狭義単調減少する連続関数として存在する。
証明
が狭義単調増加するとき示す。 を満たす点に対して中間値の定理よりとなるが存在する。 次にこのようなは一意であることを示す。 もしとなる2点が存在してだったとする。 ここでが狭義単調増加することからの場合はとなり矛盾、の場合はとなりやはり矛盾である。 よってなので、を満たすは一意に存在しとおいて上の関数を得る。 が狭義単調増加であることは同様の議論をすることで証明できる。 つまり、としてだったとすると、の単調増加性よりで矛盾するので、である。一様連続性
連続関数は点とごとにの存在を要請していたが、 条件を強めてがによらず一つで済む場合を一様連続という。
定義 1 (一様連続関数)
を実数の集合上で定義された実数値関数として、の点はすべての極限点であるとする。 ここで、任意のに対して、あるが存在して、を満たす任意のに対してが成り立つ時、関数は集合上一様連続またはは上の一様連続関数であるという。一様連続関数は連続関数であることに注意する。
例 2
- 一次関数は上の連続関数であり一様連続関数でもある。
- 二次関数は上の連続関数であるが一様連続関数ではない。 二次関数は有界閉区間上では一様連続関数である。
一様連続性は今後の議論を展開する上で重要な性質であるが、連続関数と違って積で閉じているわけではなく確認が難しい。 しかしながらハイネ・カントールの定理などと呼ばれる次の定理が知られている。
定理 3 (有界閉区間上の連続関数)
有界閉区間上の連続関数は上一様連続である。証明
が一様連続でないと仮定すると、あるが存在して任意のに対して, が存在してである。 ここでに対してとして取れば、が存在して, が成り立つ。 は有界なのでボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より部分列を取れば数列, は収束し極限をそれぞれ, とおくと、よりである。 また、は閉区間よりもわかる。 ここではで連続より、あるが存在して任意のに対してならばが成り立つことに注意する。 が大きいととなるので、そのようなに対して三角不等式より
となり矛盾が導かれた。 よって関数は上一様連続である。
連続性の度合い
実数の集合上の関数と点に対して
で定義される関数を考える。 この関数は上定義された非負値関数でありでが大きくなると上限を取るの範囲が広くなるので広義単調増加し、 定義から任意のに対して
が成立することわかる。
この式で連続性の特徴づけをするのが連続性の度合いである。
定義 1 (度合い関数)
条件
を満たす上で定義された非負値の広義単調増加関数を度合い関数という。
命題 2
を実数の集合上の関数とする。
関数が点で連続であることは度合い関数が存在して任意のに対して
が成立することと同値である。
関数が連続関数であることは各に対して度合い関数が存在して任意のに対して
が成立することと同値である。
関数が一様連続関数であることは度合い関数が存在して任意のに対して
が成立することと同値である。
証明は省略する。
度合い関数を用いれば連続性の条件をとを用いることなく簡潔に書くことができ便利であるが、 度合い関数を定義するために実一変数関数の連続性は別途定義する必要がある。