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数

自然数

自然数とはものの個数や順番を表す数のことで1,2,3といった数である。 ここで−1や1.5それに2などは自然数ではない。 なお、0を自然数とするかどうかは状況によってまちまちであるがこのテキストでは0も自然数として考える。 自然数全体の集合をℕで表す。 つまり、

ℕ={0,1,2,3,…}

である。

自然数は一つ大きくしたものも自然数つまり𝑛∈ℕならば𝑛+1∈ℕが成り立つ。 また、何回大きくしてももとの自然数には戻らず、ずっと増えていくものである。 このことから自然数の集合は無限集合の典型例であり、また数列の添字として利用される。 自然数(の集合)において重要なのはこのことであり、0を含むかどうかは些末な問題である。 このテキストでは抽象的な数列の添字として利用する場合のみにℕを用いて、添字を明示したい場合は0,1,2,3,…や1,2,3,…などと書く。

数学的帰納法とは自然数𝑛に関する命題𝑃(𝑛)の証明法である。 つまり、命題「任意の自然数𝑛=0,1,2,3,…に対して𝑃(𝑛)が成り立つ」を証明するためには以下の二つの命題を示せばよい。

  • 𝑃(0)が成り立つ。
  • 任意の自然数𝑛=0,1,2,3,…に対して𝑃(𝑛)⟹𝑃(𝑛+1)が成り立つ。

つまり最初の自然数で示して、その後一つずつ増やして証明していく論法である。 直接任意の自然数に対して証明できない場合でも数学的帰納法で証明できることが多い。 最初の自然数(上の場合は0)を取りかえることで証明できる自然数の範囲(𝑛=0,1,2,3,…)を調節できるほか、 二つ目の条件の中の“𝑃(𝑛)”という部分をより示しやすく「任意の自然数𝑘=0,1,2,3,…,𝑛に対して𝑃(𝑘)が成り立つ」に取りかえても同じ結論が得られる(累積帰納法)など様々な数学的帰納法の変種がある。

自然数には加法(足し算)と乗法(掛け算)が定義できる。 自然数𝑎, 𝑏に対して、𝑎を𝑏回一つ大きくすることが加法であり、その結果を𝑎と𝑏の和と言い𝑎+𝑏と表す。 また自然数𝑎, 𝑏に対して、0に𝑏回𝑎を足すことが乗法であり、その結果を𝑎と𝑏の積と言い𝑎⋅𝑏と表す。 積𝑎⋅𝑏は𝑎×𝑏とも表されるほか、𝑏が文字の場合は⋅や×は省略され𝑎𝑏と表される。

加法と乗法の重要な性質として、以下がある。

命題 1 (自然数の演算)

  1. (加法の結合法則)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎+𝑏)+𝑐=𝑎+(𝑏+𝑐)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意の自然数𝑎,𝑏に対して𝑎+𝑏=𝑏+𝑎が成り立つ。
  3. (乗法の結合法則)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎⋅𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅(𝑏⋅𝑐)が成り立つ。
  4. (乗法の交換法則)任意の自然数𝑎,𝑏に対して𝑎⋅𝑏=𝑏⋅𝑎が成り立つ。
  5. (分配法則)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎⋅(𝑏+𝑐)=𝑎⋅𝑏+𝑎⋅𝑐と(𝑎+𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅𝑐+𝑏⋅𝑐が成り立つ。
  6. (零元)0は零元である。 つまり任意の自然数𝑎に対して𝑎+0=0+𝑎=𝑎と𝑎⋅0=0⋅𝑎=0が成り立つ。
  7. (単位元)1は単位元である。 つまり任意の自然数𝑎に対して𝑎⋅1=1⋅𝑎=𝑎が成り立つ。

二つの自然数𝑎, 𝑏の間には大小関係が定義できる。 つまり、𝑎+𝑥=𝑏を満たす自然数𝑥=0,1,2,3,…が存在する時𝑎≤𝑏と書き、そうでない時𝑎>𝑏と書く。 また、𝑎=𝑏+𝑥を満たす自然数𝑥=0,1,2,3,…が存在する時𝑎≥𝑏と書き、そうでない時𝑎<𝑏と書く。

この大小関係の重要な性質として、以下がある。

命題 2 (自然数の大小関係)

  1. (全順序)任意の自然数𝑎,𝑏に対して𝑎≤𝑏または𝑎≥𝑏のどちらかが成立し、両方が成立する場合は𝑎=𝑏に他ならない。
  2. (推移性)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑏≤𝑐ならば𝑎≤𝑐が成り立つ。
  3. (加法との両立)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏ならば𝑎+𝑐≤𝑏+𝑐と𝑎+𝑐≤𝑏+𝑐ならば𝑎≤𝑏が成り立つ。
  4. (乗法との両立)任意の自然数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏ならば𝑎𝑐≤𝑏𝑐。

また、基礎的な大小関係

0<1<2<3<…

が成立する。

整数

自然数には加法と乗法が定義されるが減法(引き算)が定義されるとは言えない。 これは1から2を引く場合に答えが自然数の範囲から出てしまうためである。

そのような場合のために負の符号−と自然数𝑎の負数−𝑎を導入する。 また、対応して正の符号+と自然数𝑎の正数+𝑎を導入する。 正の符号+を導入したがこれはしばしば省略される。 +𝑎と−𝑎をまとめて±𝑎と表す。 整数はこれらの数±0,±1,±2,±3,…をまとめてさらに±0を0として同一視したものである。 整数のうち+0,+1,+2,+3,…の部分は自然数0,1,2,3,…と同一視する。 整数全体の集合をℤで表す。 つまり、

ℤ={±0,±1,±2,±3,…}={…,−3,−2,−1,0,1,2,3,…}

である。

整数の演算を定義するために、まず自然数の減法を答えが整数の範囲で定義する。 つまり自然数𝑎,𝑏に対して、𝑎≤𝑏の場合は𝑎+𝑥=𝑏を満たす自然数𝑥が存在するので𝑎−𝑏=−𝑥とし、𝑎≥𝑏の場合は𝑎=𝑏+𝑥を満たす自然数𝑥が存在するので𝑎−𝑏=+𝑥とする。 𝑎≤𝑏か𝑎≥𝑏の片方は成立するのと、両方が成立する場合は𝑎=𝑏で𝑎+𝑥=𝑏=𝑎なので𝑥=0で整数の定義で±0を同一視しているのでこの減法は答えが整数の範囲で定義できる。

ここから整数の加法と乗法を次で定義できる。

(+𝑎)+(+𝑏)=+(𝑎+𝑏),(+𝑎)+(−𝑏)=𝑎−𝑏,(−𝑎)+(+𝑏)=𝑏−𝑎,(−𝑎)+(−𝑏)=−(𝑎+𝑏).(+𝑎)⋅(+𝑏)=+(𝑎⋅𝑏),(+𝑎)⋅(−𝑏)=−(𝑎⋅𝑏),(−𝑎)⋅(+𝑏)=−(𝑏⋅𝑎),(−𝑎)⋅(−𝑏)=+(𝑎⋅𝑏).

整数𝑎の反数−𝑎は𝑎が正の符号を持つ場合は負の符号に、負の符号を持つ場合は正の符号に変えたものである。 整数の減法は二つの整数𝑎, 𝑏に対して

𝑎−𝑏=𝑎+(−𝑏)

として定義し、その結果を𝑎と𝑏の差と言う。

以上の整数の加法、乗法、減法は自然数に制限すると(減法は答えが整数の範囲で)自然数の加法、乗法、減法と一致することに注意する。 また、以下の性質が成り立つ。

命題 1 (整数の演算)

  1. (加法の結合法則)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎+𝑏)+𝑐=𝑎+(𝑏+𝑐)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意の整数𝑎,𝑏に対して𝑎+𝑏=𝑏+𝑎が成り立つ。
  3. (乗法の結合法則)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎⋅𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅(𝑏⋅𝑐)が成り立つ。
  4. (乗法の交換法則)任意の整数𝑎,𝑏に対して𝑎⋅𝑏=𝑏⋅𝑎が成り立つ。
  5. (分配法則)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎⋅(𝑏+𝑐)=𝑎⋅𝑏+𝑎⋅𝑐と(𝑎+𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅𝑐+𝑏⋅𝑐が成り立つ。
  6. (零元)0は零元である。 つまり任意の整数𝑎に対して𝑎+0=0+𝑎=𝑎と𝑎⋅0=0⋅𝑎=0が成り立つ。
  7. (反数)任意の整数𝑎に対して𝑎+𝑥=𝑥+𝑎=0が成り立つような整数𝑥=−𝑎がただ一つ存在する。
  8. (単位元)1は単位元である。 つまり任意の整数𝑎に対して𝑎⋅1=1⋅𝑎=𝑎が成り立つ。

正の符号を持つ整数を正の整数、負の符号を持つ整数を負の整数と言う。 ただし、0=±0は例外でどちらでもない整数として扱う。

二つの整数𝑎, 𝑏の間の大小関係𝑎≤𝑏, 𝑎>𝑏, 𝑎≥𝑏, 𝑎<𝑏を差𝑎−𝑏の符号によって定義する。 以下の性質が成り立つ。

命題 2 (整数の大小関係)

  1. (全順序)任意の整数𝑎,𝑏に対して𝑎≤𝑏または𝑎≥𝑏のどちらかが成立し、両方が成立する場合は𝑎=𝑏に他ならない。
  2. (推移性)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑏≤𝑐ならば𝑎≤𝑐が成り立つ。
  3. (加法との両立)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏ならば𝑎+𝑐≤𝑏+𝑐が成り立つ。
  4. (乗法との両立)任意の整数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑐≥0ならば𝑎𝑐≤𝑏𝑐が成り立つ。

基礎的な大小関係として

…<−3<−2<−1<0<1<2<3<…

が成立する。

有理数

減法を定義するために自然数を整数に拡張したように、除法(割り算)を定義するために整数を拡張する。 有理数は二つの整数𝑛, 𝑚 (𝑚≠0)を使って分数𝑛/𝑚や𝑛𝑚の形で表される数のことであり、 二つの有理数𝑛/𝑚, 𝑙/𝑘が𝑛𝑘=𝑙𝑚を満たすとき同一視する(通分すると同じ数であるため)。 ここで分母𝑚が0でない場合しか考えないのは0の場合を入れると後述の四則演算の性質をすべて成り立たせることができなくなるためである。 また、(−𝑛)/(−𝑚)=𝑛/𝑚であるため、𝑚として正の整数のみ考えれば十分である。 有理数のうち𝑛/1は整数𝑛と同一視する。 有理数全体の集合をℚで表す。

有理数𝑎=𝑛/𝑚に対して𝑛≠0の時、𝑚/𝑛も有理数であり𝑎の逆数といい𝑎−1と表す。 有理数のうち0と同一視されるものは0/𝑚 (𝑚≠0)であることに注意すると、0以外の有理数には逆数が存在する。

有理数の加法、減法、乗法、除法は以下で定義する。

(𝑛/𝑚)+(𝑙/𝑘)=(𝑛𝑘+𝑚𝑙)/(𝑚𝑘),(𝑛/𝑚)−(𝑙/𝑘)=(𝑛𝑘−𝑚𝑙)/(𝑚𝑘),(𝑛/𝑚)×(𝑙/𝑘)=(𝑛𝑙)/(𝑚𝑘),(𝑛/𝑚)÷(𝑙/𝑘)=(𝑛𝑘)/(𝑚𝑙).

ただし、除法は𝑙≠0の場合に限って定義される。 除法の記号としても÷の代わりに/や分数の記号を使ったりする。 定義からすぐわかる通り、除法は逆数をかけることに相当する。 これら4つの演算をまとめて四則演算という。

以上の有理数の加法、乗法、減法は整数に制限すると整数の加法、乗法、減法と一致することに注意する。 また、以下の性質が成り立つ。

命題 1 (有理数の演算)

  1. (加法の結合法則)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎+𝑏)+𝑐=𝑎+(𝑏+𝑐)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意の有理数𝑎,𝑏に対して𝑎+𝑏=𝑏+𝑎が成り立つ。
  3. (乗法の結合法則)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎⋅𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅(𝑏⋅𝑐)が成り立つ。
  4. (乗法の交換法則)任意の有理数𝑎,𝑏に対して𝑎⋅𝑏=𝑏⋅𝑎が成り立つ。
  5. (分配法則)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎⋅(𝑏+𝑐)=𝑎⋅𝑏+𝑎⋅𝑐と(𝑎+𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅𝑐+𝑏⋅𝑐が成り立つ。
  6. (零元)0は零元である。 つまり任意の有理数𝑎に対して𝑎+0=0+𝑎=𝑎と𝑎⋅0=0⋅𝑎=0が成り立つ。
  7. (反数)任意の有理数𝑎に対して𝑎+𝑥=𝑥+𝑎=0が成り立つような有理数𝑥=−𝑎がただ一つ存在する。
  8. (単位元)1は単位元である。 つまり任意の有理数𝑎に対して𝑎⋅1=1⋅𝑎=𝑎が成り立つ。
  9. (逆数)任意の有理数𝑎≠0に対して𝑎⋅𝑥=𝑥⋅𝑎=1が成り立つような有理数𝑥=𝑎−1がただ一つ存在する。

有理数𝑎=𝑛/𝑚(𝑚は正の整数)の符号は𝑛の符号と同じになるように定義する。 この符号は𝑛, 𝑚の取り方によらないことがわかる。 二つの有理数𝑎, 𝑏の間の大小関係𝑎≤𝑏, 𝑎>𝑏, 𝑎≥𝑏, 𝑎<𝑏を差𝑎−𝑏の符号によって定義する。 以下の性質が成り立つ。

命題 2 (有理数の大小関係)

  1. (全順序)任意の有理数𝑎,𝑏に対して𝑎≤𝑏または𝑎≥𝑏のどちらかが成立し、両方が成立する場合は𝑎=𝑏に他ならない。
  2. (推移性)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑏≤𝑐ならば𝑎≤𝑐が成り立つ。
  3. (加法との両立)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏ならば𝑎+𝑐≤𝑏+𝑐が成り立つ。
  4. (乗法との両立)任意の有理数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑐≥0ならば𝑎𝑐≤𝑏𝑐が成り立つ。

実数

これまでの流れで四則演算が定義できるように数の範囲を拡張して有理数を得たが、 さらに極限と呼ばれる操作をしたときにその結果が有理数から出ても大丈夫なようにさらに数の範囲を拡張する。

実数はそのような拡張の一つで、ここではデデキント切断と呼ばれる方法で定義する。 つまり、次の条件を満たす有理数の集合𝐴⊂ℚを有理数の切断という。

  • 任意の𝑎∈𝐴と𝑏∈𝐴𝑐に対して、𝑎≤𝑏が成り立つ。
  • 𝐴は空集合∅でない。
  • 𝐴は全体集合ℚでない。

実数はこのような有理数の切断であり、一つの有理数を取り除いたら有理数の切断ではなくなるものである。 有理数の切断の本質的な条件は最初のものであり、これにより有理数を数直線上で左(𝐴)と右(𝐴𝑐)に分けて(切断して)いる。 実数は切断する点に相当し切断する点が左には入れないとしたものである。

例えば𝑎を有理数とすると、𝑎以下の有理数全体{𝑥∈ℚ|𝑥≤𝑎}は有理数の切断である。 また、𝑎未満の有理数全体{𝑥∈ℚ|𝑥<𝑎}も有理数の切断である。 これらの有理数の切断は𝑎が元としてあるかないかの違いであり、後者はこれ以上有理数を取り除けないので実数となり、有理数𝑎と同一視する。

例 1

実数であるが有理数ではない(有理数とはみなせない)数として2の平方根2がある。 この有理数の切断としての表現は{𝑥∈ℚ|𝑥<2}ということになるが2は定義されていないので、今までの記号で書くならば{𝑥∈ℚ|𝑥<0∨𝑥⋅𝑥<2}となり確かにこれは有理数でない有理数の切断(実数)になっている。

実数のうち有理数でないものを無理数という。 実数全体の集合をℝで表す。

実数𝑎=𝐴, 𝑏=𝐵の大小関係を𝐴⊂𝐵が成り立つとき𝑎≤𝑏、そうでない時𝑎>𝑏として定義する。 また、𝐴⊃𝐵が成り立つとき𝑎≥𝑏、そうでない時𝑎<𝑏と定義する。 有理数の切断としての実数は切断する点が取り除かれていることに注意する。 以下の性質が成り立つ。

命題 2 (実数の大小関係)

  1. (全順序)任意の実数𝑎,𝑏に対して𝑎≤𝑏または𝑎≥𝑏が成立し、両方が成立する場合は𝑎=𝑏に他ならない。
  2. (推移性)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑏≤𝑐ならば𝑎≤𝑐が成り立つ。

実数は有理数の隙間を埋めて得られると考えられるが、有理数は2つの実数の間にぎっしり詰まっていて次が成立する。

命題 3 (有理数の稠密性)

実数𝑎, 𝑏が𝑎<𝑏を満たす時、𝑎<𝑐<𝑏を満たす有理数𝑥が存在する。

証明

有理数の切断による。 実数𝑎の有理数の切断としての表現を𝐴、実数𝑏の有理数の切断としての表現を𝐵とする。 ここで、𝐴を𝑎が有理数のとき𝐴∪{𝑎}、そうでないとき𝐴として定義すると𝐴も有理数の切断で、仮定より𝑐∈𝐵\𝐴となる有理数𝑐が存在する。 この𝑐に対して𝑎<𝑐<𝑏を示せばよい。 有理数𝑐の有理数の切断としての表現を𝐶とすると、𝐶={𝑥∈ℚ|𝑥<𝑐}であった。 まず𝑐∈𝐵だが𝑐∉𝐶なので、𝐶⊃𝐵ではなく、𝑐<𝑏である。 次に𝐴⊂𝐶を示すために有理数𝑥∈𝐴を取ると𝑐∉𝐴より有理数の切断の定義から𝑥<𝑐が成り立ち𝑥∈𝐶である。 ここから、𝐴⊃𝐶とすると𝐴=𝐴=𝐶となるが、これは𝑎が無理数かつ𝑎=𝑐である場合にしか成り立たないので、𝑎<𝑐が成り立つ。 以上により証明が完成した。

𝑎,𝑏を𝑎≤𝑏を満たす実数として、以下の集合を定義し、まとめて区間という。

[𝑎,𝑏]={𝑥∈ℝ|𝑎≤𝑥≤𝑏},[𝑎,𝑏)={𝑥∈ℝ|𝑎≤𝑥<𝑏},[𝑎,+∞)={𝑥∈ℝ|𝑎≤𝑥},(𝑎,𝑏]={𝑥∈ℝ|𝑎<𝑥≤𝑏},(𝑎,𝑏)={𝑥∈ℝ|𝑎<𝑥<𝑏},(𝑎,+∞)={𝑥∈ℝ|𝑎<𝑥},(−∞,𝑏]={𝑥∈ℝ|𝑥≤𝑏},(−∞,𝑏)={𝑥∈ℝ|𝑥<𝑏},(−∞,+∞)=ℝ.

このうち[𝑎,𝑏],[𝑎,+∞),(−∞,𝑏],(−∞,+∞)を閉区間といい、 (𝑎,𝑏),(𝑎,+∞),(−∞,𝑏),(−∞,+∞)を開区間という。 また、[𝑎,𝑏],[𝑎,𝑏),(𝑎,𝑏],(𝑎,𝑏)を有界区間という。 特に区間[𝑎,𝑏]は有界閉区間と呼ばれる。

命題 4 (実数と有理数の切断の対応)

𝑎を実数とすると、𝑎の有理数の切断としての表現は

(−∞,𝑎)∩ℚ={𝑥∈ℚ|𝑥<𝑎}

である。

証明

𝐵={𝑥∈ℚ|𝑥<𝑎}が有理数の切断であることを示す。 実際、有理数範囲での補集合は𝐵𝑐={𝑥∈ℚ|𝑥≥𝑎}であるので、𝑥∈𝐵, 𝑦∈𝐵𝑐ならば𝑥<𝑎≤𝑦である。 また、𝑎−1<𝑎<𝑎+1として有理数の稠密性(命題 3)を用いれば𝐵も𝐵𝑐も空集合でないことがわかる。 さらに𝐵から一つの有理数𝑏を取り除くことを考えると𝑏<𝑎よりやはり有理数の稠密性から𝑏<𝑐<𝑎なる𝑐∈𝐵が存在するので、𝐵\{𝑏}は有理数の切断ではない。 以上により𝐵に対応する実数が存在し、その実数を𝑏とする。

次に𝑎=𝑏つまり𝐴=𝐵であることを示す。 そのためには有理数𝑥に対して𝑥∈𝐴と𝑏∈𝐵が同値を示せばよく、𝑥≤𝑎と𝑥∈𝐵が同値を示せばよい。 これは𝐵の定義に他ならないので、証明が完成した。

実数にも有理数同様、四則演算つまり加法、減法、乗法、除法と反数、逆数が定義できるがその説明をするには上限・下限の概念が必要になる。 ここではそれらが定義できたとしてその性質を紹介する。

命題 5 (実数の演算と大小関係)

  1. (加法の結合法則)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎+𝑏)+𝑐=𝑎+(𝑏+𝑐)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意の実数𝑎,𝑏に対して𝑎+𝑏=𝑏+𝑎が成り立つ。
  3. (乗法の結合法則)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎⋅𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅(𝑏⋅𝑐)が成り立つ。
  4. (乗法の交換法則)任意の実数𝑎,𝑏に対して𝑎⋅𝑏=𝑏⋅𝑎が成り立つ。
  5. (分配法則)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎⋅(𝑏+𝑐)=𝑎⋅𝑏+𝑎⋅𝑐と(𝑎+𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅𝑐+𝑏⋅𝑐が成り立つ。
  6. (零元)0は零元である。 つまり任意の実数𝑎に対して𝑎+0=0+𝑎=𝑎と𝑎⋅0=0⋅𝑎=0が成り立つ。
  7. (反数)任意の実数𝑎に対して𝑎+𝑥=𝑥+𝑎=0が成り立つような実数𝑥=−𝑎がただ一つ存在する。
  8. (単位元)1は単位元である。つまり任意の実数𝑎に対して𝑎⋅1=1⋅𝑎=𝑎が成り立つ。
  9. (逆数)任意の実数𝑎≠0に対して𝑎⋅𝑥=𝑥⋅𝑎=1が成り立つような実数𝑥=𝑎−1がただ一つ存在する。
  10. (大小関係の加法との両立)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏ならば𝑎+𝑐≤𝑏+𝑐が成り立つ。
  11. (大小関係の乗法との両立)任意の実数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑐≥0ならば𝑎𝑐≤𝑏𝑐が成り立つ。

拡大実数

実数に正の無限大+∞と負の無限大−∞を入れた数を拡大実数という。 有理数の切断で説明するならば、負の無限大は空集合∅が正の無限大は全体集合ℚがそれぞれ対応する。 拡大実数全体の集合をℝ̄で表す。 つまり、

ℝ̄=ℝ∪{−∞,+∞}

である。 拡大実数𝑎が与えられた時に、その数が正または負の無限大でないとき、つまり𝑎が実数のときは𝑎は有限であると表現する。

拡大実数を導入する利点は、正と負の無限大を数として考えることで後で登場する上限下限や極限を一貫した数体系で記述できるほか、大小関係や区間が自然に拡張できる。 一方で四則演算に一部欠落があるのでそこには注意する。

つまり、拡大実数の大小関係を有理数の切断の包含関係で考えると、任意の拡大実数𝑎に対して

−∞≤𝑎≤+∞

が成り立ち、以下の性質が成り立つ。

命題 1 (拡大実数の大小関係)

  1. (全順序)任意の拡大実数𝑎,𝑏に対して𝑎≤𝑏または𝑎≥𝑏のどちらかが成立し、両方が成立する場合は𝑎=𝑏に他ならない。
  2. (推移性)任意の拡大実数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎≤𝑏かつ𝑏≤𝑐ならば𝑎≤𝑐が成り立つ。

𝑎,𝑏を𝑎≤𝑏を満たす拡大実数として、区間は次の4種類に集約される。

[𝑎,𝑏]={𝑥∈ℝ̄|𝑎≤𝑥≤𝑏},[𝑎,𝑏)={𝑥∈ℝ̄|𝑎≤𝑥<𝑏},(𝑎,𝑏]={𝑥∈ℝ̄|𝑎<𝑥≤𝑏},(𝑎,𝑏)={𝑥∈ℝ̄|𝑎<𝑥<𝑏}.

特にℝ̄=[−∞,+∞]でℝ=(−∞,+∞)である。

拡大実数の四則演算は実数のものに以下を付け加える。 つまり𝑎を実数として、

(+∞)+𝑎=𝑎+(+∞)=+∞,(+∞)+(+∞)=+∞,(−∞)+𝑎=𝑎+(−∞)=−∞,(−∞)+(−∞)=−∞

とする。 拡大実数の反数は−(+∞)=−∞, −(−∞)=+∞とすればよい。 𝑎を正の実数または正の無限大として、

(+∞)⋅𝑎=𝑎⋅(+∞)=+∞,(+∞)⋅(−𝑎)=(−𝑎)⋅(+∞)=−∞,(−∞)⋅𝑎=𝑎⋅(−∞)=−∞,(−∞)⋅(−𝑎)=(−𝑎)⋅(−∞)=+∞

とする。 拡大実数の逆数は(+∞)−1=(−∞)−1=0とするが0の逆数は定義されないことに注意する。

以上の四則演算は定義される範囲においては直感的であるが、

∞−∞,0×∞,∞÷∞,0÷0

に相当する計算の結果は定義されず、不定形と呼ばれる。

複素数

どの実数でもない仮想的な数𝑖を導入し、実数𝑎,𝑏を使って𝑧=𝑎+𝑏𝑖と表現される数を複素数という。 このときの実数𝑎を複素数𝑧の実部といいℜ𝑧で表し、実数𝑏を虚部といいℑ𝑧と表し、𝑖を虚数単位という。 二つの複素数𝑧=𝑎+𝑏𝑖と𝑤=𝑐+𝑑𝑖が等しいとは実部と虚部の両方が等しいということであり𝑎=𝑐かつ𝑏=𝑑である。 虚部がない(0である)場合の複素数𝑧=𝑎+0𝑖は実数𝑎と同一視される。 複素数全体の集合をℂで表す。

複素数の加算を次で定める。

(𝑎+𝑏𝑖)+(𝑐+𝑑𝑖)=(𝑎+𝑐)+(𝑏+𝑑)𝑖.

ここから複素数𝑧=𝑎+𝑏𝑖の反数は−𝑧=(−𝑎)+(−𝑏)𝑖であることが従い、減法は次になる。

(𝑎+𝑏𝑖)−(𝑐+𝑑𝑖)=(𝑎−𝑐)+(𝑏−𝑑)𝑖.

複素数の乗法を次で定める。

(𝑎+𝑏𝑖)⋅(𝑐+𝑑𝑖)=(𝑎𝑐−𝑏𝑑)+(𝑎𝑑+𝑏𝑐)𝑖.

特に𝑖⋅𝑖=−1であり、その意味で虚数単位はしばしば𝑖=−1と表現される。 複素数𝑧=𝑎+𝑏𝑖≠0の逆数は𝑧−1=𝑎𝑎2+𝑏2−𝑏𝑎2+𝑏2𝑖であり、除法は次になる。

(𝑎+𝑏𝑖)÷(𝑐+𝑑𝑖)=𝑎𝑐+𝑏𝑑𝑐2+𝑑2+𝑏𝑐−𝑎𝑑𝑐2+𝑑2𝑖.

これらの複素数の四則演算は以下の性質を満たす。

命題 1 (複素数の演算)

  1. (加法の結合法則)任意の複素数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎+𝑏)+𝑐=𝑎+(𝑏+𝑐)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意の複素数𝑎,𝑏に対して𝑎+𝑏=𝑏+𝑎が成り立つ。
  3. (乗法の結合法則)任意の複素数𝑎,𝑏,𝑐に対して(𝑎⋅𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅(𝑏⋅𝑐)が成り立つ。
  4. (乗法の交換法則)任意の複素数𝑎,𝑏に対して𝑎⋅𝑏=𝑏⋅𝑎が成り立つ。
  5. (分配法則)任意の複素数𝑎,𝑏,𝑐に対して𝑎⋅(𝑏+𝑐)=𝑎⋅𝑏+𝑎⋅𝑐と(𝑎+𝑏)⋅𝑐=𝑎⋅𝑐+𝑏⋅𝑐が成り立つ。
  6. (零元)0は零元である。 つまり任意の複素数𝑎に対して𝑎+0=0+𝑎=𝑎と𝑎⋅0=0⋅𝑎=0が成り立つ。
  7. (反数)任意の複素数𝑎に対して𝑎+𝑥=𝑥+𝑎=0が成り立つような複素数𝑥=−𝑎がただ一つ存在する。
  8. (単位元)1は単位元である。 つまり任意の複素数𝑎に対して𝑎⋅1=1⋅𝑎=𝑎が成り立つ。
  9. (逆数)任意の複素数𝑎≠0に対して𝑎⋅𝑥=𝑥⋅𝑎=1が成り立つような複素数𝑥=𝑎−1がただ一つ存在する。

なお、実数のときにはあった数の大小関係は複素数においてはない。 本テキストで単に数と言えば複素数で成り立つ場合が多い。

不等式

不等式の基礎として自乗𝑎2=𝑎⋅𝑎に関する次の性質がある。

命題 1 (自乗の単調性)

任意の0≤𝑎≤𝑏を満たす拡大実数𝑎,𝑏に対して、𝑎2≤𝑏2が成り立つ。 等号成立条件は𝑎=𝑏である、つまり𝑎2=𝑏2ならば𝑎=𝑏である。

証明

𝑏が無限大のときは自乗𝑏2も正の無限大なので、不等号は成立する。 そのため、以降では𝑏が有限のときを考え、このとき𝑎も有限であることに注意する。 このとき、仮定𝑎≤𝑏の両辺に𝑎をかけることで𝑎2≤𝑎𝑏が成り立つ。 また、仮定𝑎≤𝑏の両辺に𝑏をかけることで𝑎𝑏≤𝑏2が成り立つ。 以上より、𝑎2≤𝑎𝑏≤𝑏2が成り立つので、𝑎2≤𝑏2が成り立つ。 等号が成立する場合には𝑎2=𝑎𝑏=𝑏2が成り立つ。 ここで、𝑏≠0のときには、二つの等式𝑎𝑏=𝑏2の両辺を𝑏≠0で割ると𝑎=𝑏が得られる。 𝑏=0のときは𝑎=𝑏=0でやはり𝑎=𝑏が得られる。

命題 2 (自乗の非負性)

任意の拡大実数𝑎に対して𝑎2≥0が成立する。 等号成立条件は𝑎=0である、つまり𝑎2=0ならば𝑎=0である。

証明

𝑎の符号により場合分けする。

  • 𝑎≥0ときは、自乗の単調性で𝑎=0、𝑏を𝑎とすることで、𝑎2≥0が成立する。
  • 𝑎≤0のとき、−𝑎≥0なので、(−𝑎)2=𝑎2≥0が成立する。

なお、以上の内容をさらに詳しく考えると次のようにまとめることができる。

命題 3 (二次不等式)

𝑎を非負の拡大実数とする。 このとき任意の拡大実数𝑥に対して次が成り立つ。

  • 𝑥2≤𝑎2が成り立つことと−𝑎≤𝑥≤+𝑎が成り立つことは同値である。
  • 𝑥2≥𝑎2が成り立つことと𝑥≤−𝑎∨𝑥≥+𝑎が成り立つことは同値である。
  • 𝑥2=𝑎2が成り立つことと𝑥=±𝑎が成り立つことは同値である。

証明

まず、自乗の単調性から+0≤𝑥≤+𝑎に対して𝑥2≤𝑎2で−𝑎≤𝑥≤−0に対しても𝑥2≤𝑎2である。 さらにやはり自乗の単調性から𝑥≥+𝑎に対して𝑥2≥𝑎2で𝑥≤−𝑎に対しても𝑥2≥𝑎2が成り立つ。 また、等号𝑥2=𝑎2が成り立つ条件は𝑥≥+0のときは𝑥=+𝑎で𝑥≤−0のときは𝑥=−𝑎なので、まとめると𝑥=±𝑎である。 ここで不等式𝑥2≤𝑎2において𝑥>+𝑎も成り立つとすると𝑥2≥𝑎2より等号が成立するので𝑥=±𝑎となり、𝑥>+𝑎に矛盾する。 同様に𝑥<+𝑎でも矛盾が導かれるので、命題の一つ目の内容が示される。 さらに不等式𝑥2≥𝑎2と−𝑎<𝑥<+𝑎が同時に成り立つとすると𝑥2≤𝑎2で𝑥=±𝑎となり矛盾するので、二つ目の内容も示された。

それはさておき自乗の非負性から次を得る。

命題 4

任意の実数𝑎, 𝑏に対して次が成立する。

𝑎2+𝑏22≥𝑎𝑏.

等号成立条件は𝑎=𝑏である。

注意 5

平方根はまだ定義されていないが、上記の命題の𝑎, 𝑏が平方根の場合を考えると、任意の𝑎≥0, 𝑏≥0に対して、

𝑎+𝑏2≥𝑎𝑏

が成立する。 ここで、𝑎+𝑏2を𝑎, 𝑏の算術平均または相加平均、𝑎𝑏を𝑎, 𝑏の幾何平均または相乗平均という。 そのため今回の不等式は算術平均は幾何平均以上であることを保証し、算術平均・幾何平均の不等式という。

証明

左辺から右辺を引いたものは

𝑎2+𝑏22−𝑎𝑏=12(𝑎2+𝑏2−2𝑎𝑏)=12(𝑎−𝑏)2≥0

を満たすので、不等式が成立する。

次の不等式はコーシー・シュワルツの不等式と呼ばれる。

命題 6 (コーシー・シュワルツの不等式)

任意の実数𝑎, 𝑏, 𝑐, 𝑑に対して、

(𝑎𝑐+𝑏𝑑)2≤(𝑎2+𝑏2)(𝑐2+𝑑2)

が成立する。

証明

右辺から左辺を引いたものは

(𝑎2+𝑏2)(𝑐2+𝑑2)−(𝑎𝑐+𝑏𝑑)2=(𝑎𝑑−𝑏𝑐)2≥0

を満たすので、不等式が成立する。

コーシー・シュワルツの不等式は項数を増やしたり積分に一般化され、後の章で登場する。