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空間

点と空間

平面上の点は座標軸を定めるとその座標を読み取ることで2つの(実)数の組(対)が対応する。 また、三次元空間は3つの実数の組が対応する。 しかしながら空間が何かと聞かれたら幾何学的な問題となり難しいので、本テキストでは逆に𝑁=1,2,3,…として𝑁個の実数𝑥1,…,𝑥𝑁の組𝑃=(𝑥1,…,𝑥𝑁)のことを𝑁次元空間上の点と呼び、𝑁次元空間上の点をすべて集めたものを𝑁次元空間ということにする。 つまり𝑁次元空間とは実数の直積ℝ𝑁に他ならない。 𝑁=1のとき、つまりℝ1は直線といい、 𝑁=2のとき、つまりℝ2は平面という。 𝑁次元空間の点の集合つまり𝑁次元空間の部分集合のことを𝑁次元点集合と呼ぶことがある。

𝑁次元空間上の点𝑃=(𝑥1,…,𝑥𝑁)に対して、実数𝑥𝑖を𝑃の第𝑖成分という。 ただし、𝑖=1,…,𝑁である。 点𝑃に対して、第𝑖成分を𝑃𝑖または𝑃𝑖と表すことがある。 この節では点を大文字の𝑃を使って書いているが以降では𝑎や変数の場合は𝑥など小文字を用いることもある。

𝑁次元空間上の演算において最も基礎的になるのは(ユークリッド)距離である。 つまり、二点𝑃=(𝑥1,…,𝑥𝑁), 𝑄=(𝑦1,…,𝑦𝑁)間の距離𝑑(𝑃,𝑄)をピタゴラスの定理(三平方の定理)にもとづき

𝑑(𝑃,𝑄)=𝑑((𝑥1,…,𝑥𝑁),(𝑦1,…,𝑦𝑁))=(𝑦1−𝑥1)2+…+(𝑦𝑁−𝑥𝑁)2

と定義する。

距離の満たす重要な性質として次がある。

  1. (正値性)任意の点𝑃, 𝑄に対して𝑑(𝑃,𝑄)≥0が成り立つ。
  2. (同一性)任意の点𝑃, 𝑄に対して𝑑(𝑃,𝑄)=0と𝑃=𝑄は同値である。
  3. (対称性)任意の点𝑃, 𝑄に対して𝑑(𝑃,𝑄)=𝑑(𝑄,𝑃)が成り立つ。
  4. (三角不等式)任意の点𝑃, 𝑄, 𝑅に対して𝑑(𝑃,𝑅)≤𝑑(𝑃,𝑄)+𝑑(𝑄,𝑅)が成り立つ。

点𝑎∈ℝ𝑁と正の数𝑟>0に対して、𝑎から半径𝑟内の点の集合

𝐵𝑟(𝑎)={𝑥∈ℝ𝑁|𝑑(𝑎,𝑥)<𝑟},𝐵𝑟(𝑎)={𝑥∈ℝ𝑁|𝑑(𝑎,𝑥)≤𝑟}

をそれぞれ点𝑎の𝑟を半径とする開円板と閉円板という。 また、閉円板に関しては𝑟=0でも𝐵0(𝑎)={𝑎}として定義する。

空間ベクトル

𝑁次元空間上の2点𝑃=(𝑥1,…,𝑥𝑁), 𝑄=(𝑦1,…,𝑦𝑁)を取ると成分同士を引くことで新しい実数の組

𝑃𝑄⃗=(𝑦1−𝑥1,…,𝑦𝑁−𝑥𝑁)

が定義できる。 この𝑃𝑄⃗のことを点𝑃から点𝑄への𝑁次元空間ベクトルあるいは単にベクトルという。

𝑁次元空間ベクトル全体も、実数の組全体であり、𝑁次元空間同様ℝ𝑁と表すが、空間と空間ベクトル全体では使える演算が異なることに注意する。 実際、ベクトル𝑢=(𝑢1,…,𝑢𝑁)と𝑣=(𝑣1,…,𝑣𝑁)に対して加法

𝑢+𝑣=(𝑢1+𝑣1,…,𝑢𝑁+𝑣𝑁)

が定義でき、ベクトル𝑢=(𝑢1,…,𝑢𝑁)と実数𝑎に対して定数乗法

𝑎𝑢=(𝑎𝑢1,…,𝑎𝑢𝑁)

が定義できる。 また、2つのベクトル𝑢=(𝑢1,…,𝑢𝑁)と𝑣=(𝑣1,…,𝑣𝑁)に対して、

𝑢⋅𝑣=𝑢1𝑣1+…+𝑢𝑁𝑣𝑁

を𝑢と𝑣の内積といい、

‖𝑢‖=𝑢12+…+𝑢𝑁2

を𝑢の大きさまたはノルムという。 二点𝑃と𝑄の間の距離はそのベクトルの大きさとなる。

𝑑(𝑃,𝑄)=‖𝑃𝑄⃗‖.

ベクトルは以下の性質を満たす。

  1. (加法の結合法則)任意のベクトル𝑢,𝑣,𝑤に対して(𝑢+𝑣)+𝑤=𝑢+(𝑣+𝑤)が成り立つ。
  2. (加法の交換法則)任意のベクトル𝑢,𝑣に対して𝑢+𝑣=𝑣+𝑢が成り立つ。
  3. (両立法則)任意のベクトル𝑢と実数𝑎,𝑏に対して𝑎(𝑏𝑢)=(𝑎𝑏)𝑢が成り立つ。
  4. (分配法則)任意のベクトル𝑢,𝑣と実数𝑎,𝑏に対して𝑎(𝑢+𝑣)=𝑎𝑢+𝑎𝑣と(𝑎+𝑏)𝑢=𝑎𝑢+𝑏𝑢が成り立つ。
  5. (零ベクトル)0=(0,…,0)は零元である。 つまり任意のベクトル𝑢に対して𝑢+0=0+𝑢=𝑢が成り立つ。
  6. (逆ベクトル)任意のベクトル𝑢に対して𝑢+𝑥=𝑥+𝑢=0が成り立つようなベクトル𝑥=−𝑢がただ一つ存在する。
  7. (単位元)1は単位元である。 つまり任意のベクトル𝑢に対して1⋅𝑢=𝑢が成り立つ。
  8. (内積の対称性)任意のベクトル𝑢,𝑣に対して𝑢⋅𝑣=𝑣⋅𝑢が成り立つ。
  9. (内積の多重線形性)任意のベクトル𝑢,𝑣,𝑤に対して(𝑢+𝑣)⋅𝑤=𝑢⋅𝑤+𝑣⋅𝑤と𝑢⋅(𝑣+𝑤)=𝑢⋅𝑣+𝑢⋅𝑤が成り立つ。
  10. (内積の正定値性)任意のベクトル𝑢に対して𝑢⋅𝑢≥0であり、𝑢⋅𝑢=0と𝑢=0は同値である。
  11. (ノルムの正値性)任意のベクトル𝑢に対して‖𝑢‖≥0であり、‖𝑢‖=0と𝑢=0は同値である。
  12. (ノルムの斉次性)任意のベクトル𝑢と実数𝑎に対して‖𝑎𝑢‖=|𝑎|‖𝑢‖が成り立つ。
  13. (三角不等式)任意のベクトル𝑢,𝑣に対して‖𝑢+𝑣‖≤‖𝑢‖+‖𝑣‖が成り立つ。

空間ベクトル𝑢=(𝑢1,…,𝑢𝑁)と𝑣=(𝑣1,…,𝑣𝑁)に対して、距離をその差のノルムとする、つまり

𝑑(𝑢,𝑣)=‖𝑣−𝑢‖=(𝑣1−𝑢1)2+…+(𝑣𝑁−𝑢𝑁)2

とすると、空間上の点に対する距離と同等のものが定義できる。 もちろんこのベクトルの距離も空間上の点の距離と同様の性質を持つ。

ちなみに複素数も平面や平面ベクトル同様集合的にはℝ2であるが、複素数には乗法と除法が備わっていてさらに豊かな構造を持っている。 また、直線ℝ1は実数全体ℝと同一視されるが、直線ベクトルのノルムは実数の絶対値と同質なものである。

空間上の点𝑃=(𝑥1,…,𝑥𝑁)と空間ベクトル𝑢=(𝑢1,…,𝑢𝑁)に対して𝑃を𝑢だけ平行移動して空間上の点

𝑃+𝑢=(𝑥1+𝑢1,…,𝑥𝑁+𝑢𝑁)

を得ることができる。 点𝑃,𝑄に対して𝑃+𝑃𝑄⃗=𝑄である。

矩形と有界性

実数の集合において重要な役割を果たしていたのが区間であるが、𝑁次元空間あるいは𝑁次元空間ベクトルの空間でそれに相当するのが矩形(長方形)であり区間の直積に相当する。 特に有界閉区間に当たる有界閉矩形が重要であり、2𝑁個の実数𝑎1≤𝑏1,…,𝑎𝑁≤𝑏𝑁で定まる点集合

[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]

を有界閉矩形と呼ぶ。

点集合𝑋を考える。 つまり、𝑋は𝑁次元空間ℝ𝑁の部分集合である。 ここで実数𝑎1≤𝑏1,…,𝑎𝑁≤𝑏𝑁が存在して𝑋⊂[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]が成り立つとき、𝑋は有界であるという。 つまり𝑋を被覆する有界閉矩形が存在すると言い換えることができる。

一般的な教科書では有界性を円で定義されることが多いが、矩形で定義しても円で定義しても同じである。

命題 1

点集合𝑋に対して、𝑋⊂[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]となる有界閉矩形[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]が存在することと𝑋⊂𝐵𝑅(0)となる半径𝑅≥0が存在することは同値である。 ただし、0=(0,…,0)である。

証明

有界閉矩形[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]で被覆できたとすると𝐿=max{|𝑎1|,|𝑏1|,…,|𝑎𝑁|,|𝑏𝑁|}として有界閉矩形[−𝐿,𝐿]𝑁でも被覆でき、𝑅=𝑁𝐿とすればよい。 閉円板𝐵𝑅(0)で被覆できたとすると、有界閉矩形[−𝑅,𝑅]𝑁でも被覆できる。

本テキストで矩形を用いるのは点列の収束の議論で区間の問題に帰着させたり、リーマン積分を区間の類推で定義するためである。

自明なことであるが有界閉矩形は有界であることに注意する。

空でない有界な集合に対してそれを被覆する最も小さい有界閉矩形が存在して、以下のようにして構成できる。

命題 2

𝑋を空でない有界な𝑁次元点集合とする。 このとき、𝑖=1,…,𝑁に対して以下で𝑎̄𝑖,𝑏̄𝑖を定めると、 [𝑎̄1,𝑏̄1]×…×[𝑎̄𝑁,𝑏̄𝑁]は有界閉矩形であり、𝑋⊂[𝑎̄1,𝑏̄1]×…×[𝑎̄𝑁,𝑏̄𝑁]であり、𝑋⊂[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]ならば[𝑎̄1,𝑏̄1]×…×[𝑎̄𝑁,𝑏̄𝑁]⊂[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]を満たす。

𝑎̄𝑖=sup{𝑎∈ℝ|𝑋⊂{𝑥∈ℝ𝑁|𝑥𝑖≥𝑎}},𝑏̄𝑖=inf{𝑏∈ℝ|𝑋⊂{𝑥∈ℝ𝑁|𝑥𝑖≤𝑏}}.

このような矩形を空でない有界な点集合の最小被覆有界閉矩形と呼ぶ。

点列の極限

数列を思い出すとこれは自然数𝑛に対し数(自然数、整数、有理数、実数、複素数など)を対応させることで、無限に連なる数の並びを表現したものであった。 これと同様の発想で数の代わりに𝑁次元空間上の点あるいは𝑁次元空間ベクトル𝑎𝑛をならべたもの(𝑎𝑛)を𝑁次元点列という。

数列に対して極限が(存在したら)あったように、点列に対しても極限の概念を導入する。 このとき、数列の極限は絶対値を使って定義していたのに対して、点列では距離を使って定義することが重要である。 つまり、点列(𝑎𝑛)が𝑛→∞で点𝑎に収束するとは

任意の𝜀>0に対して、ある自然数𝑁が存在して、𝑁以上のすべての自然数𝑛に対して𝑑(𝑎,𝑎𝑛)<𝜀が成り立つ

ことを言う。 このことは言い換えると𝑛→∞で非負の実数列(𝑑(𝑎,𝑎𝑛))𝑛が0に収束することと同値である。 こちらの表現の方が単純なので本テキストでは以下のように点列の極限を定義する。

定義 1 (点列の極限)

点列(𝑎𝑛)が𝑛→∞で点𝑎に収束するあるいは𝑎が(𝑎𝑛)の𝑛→∞での極限であるとは𝑛→∞で

𝑑(𝑎,𝑎𝑛)→0

が成り立つことをいう。 点列(𝑎𝑛)が何らかの数に収束する時この点列は収束するといい、そうでない時発散するという。

例 2

𝑎を定点として定点列(𝑎)𝑛の極限は𝑎である。

極限は存在したら一意である。

命題 3

点列(𝑎𝑛)が収束したらその極限は一つしかない、つまり(𝑎𝑛)が𝑎に収束し𝑏にも収束したとすると𝑎=𝑏である。

証明

三角不等式より

𝑑(𝑎,𝑏)≤𝑑(𝑎,𝑎𝑛)+𝑑(𝑏,𝑎𝑛)

で、𝑛についての極限を取ると右辺は0に収束するのではさみうちの原理より𝑑(𝑎,𝑏)=0がわかる。 よって、距離の同一性より𝑎=𝑏である。

命題 4

(𝑎𝑛)を点列、𝑎を点とする。 もし(𝑎𝑛)𝑛の任意の部分列(𝑎𝑛𝑘)𝑘が𝑎に部分列収束する、つまり𝑎に収束する部分列(𝑎𝑛𝑘𝑙)𝑙が存在するとき、(𝑎𝑛)は𝑎に収束する。

証明

非負の実数列(𝑑(𝑎,𝑎𝑛))𝑛を考えると実数列での対応する命題が成り立つので、𝑑(𝑎,𝑎𝑛)→0であり証明が完了する。

連続関数

この節では主に多変数関数𝑓:ℝ×…×ℝ→ℝの極限や連続性について見ていく。 このとき直積ℝ×…×ℝを𝑁次元空間ℝ𝑁と同一視すると関数𝑓は空間上の点からの一変数関数のように見なすことができ、点列の収束のところで見たように実数だったら絶対値を使っていたところを距離に置き換えることで、極限が定義できる。

より詳しくは𝑁=1,2,3,…として、𝑁次元点集合𝑋上で定義された実数値関数𝑓:𝑋→ℝを考える。 点𝑎は、任意の正の数𝛿に対して0<𝑑(𝑎,𝑥)<𝛿を満たす𝑥∈𝑋が存在するとして、このような𝑎を𝑋の極限点という。 点列の収束が距離を用いることで数列の収束に帰着できたように、連続性も度合い関数を用いて簡潔に記述することができる。

定義 1 (空間上の関数の極限)

𝑓を点集合𝑋上の実数値関数、𝑎を𝑋の極限点、𝑙を実数とする。 関数𝑓(𝑥)が𝑥→𝑎で実数𝑙に収束するあるいは𝑙が𝑓(𝑥)の𝑥→𝑎での極限であるとは 度合い関数𝜔𝑎が存在し任意の𝑥∈𝑋に対して

|𝑓(𝑥)−𝑙|≤𝜔𝑎(𝑑(𝑎,𝑥))

が成り立つことをいう。

今後の議論の展開の中で値域が実数でなくℝ𝑀 (𝑀=1,2,3,…)である場合に拡張する必要がありそのために極限の概念を拡張しておく。

定義 2 (空間上のℝ𝑀値関数の極限)

𝐹を点集合𝑋上のℝ𝑀値関数、𝑎を𝑋の極限点、𝐿をℝ𝑀の点とする。 関数𝐹(𝑥)が𝑥→𝑎で点𝐿に収束するあるいは𝐿が𝐹(𝑥)の𝑥→𝑎での極限であるとは 度合い関数𝜔𝑎が存在し任意の𝑥∈𝑋に対して

𝑑(𝐿,𝐹(𝑥))≤𝜔𝑎(𝑑(𝑎,𝑥))

が成り立つことをいう。

ℝ𝑀値関数の極限を調べるには各成分の極限を調べれば十分である。

命題 3

𝑓1,…,𝑓𝑀を点集合𝑋上の実数値関数として𝐹(𝑥)=(𝑓1(𝑥),…,𝑓𝑀(𝑥))によりℝ𝑀値関数𝐹を定める。 𝑎を𝑋の極限点、𝐿=(𝑙1,…,𝑙𝑀)をℝ𝑀の点とする。 このとき、関数𝐹(𝑥)が𝑥→𝑎で点𝐿に収束することは、 各𝑖=1,…,𝑀に対して関数𝑓𝑖(𝑥)が𝑥→𝑎で実数𝑙𝑖に収束することと同値である。

証明

𝐹(𝑥)が収束するならばの方が簡単で、各𝑖=1,…,𝑀に対して

|𝑓𝑖(𝑥)−𝑙𝑖|≤𝑑(𝐿,𝐹(𝑥))≤𝜔𝑎(𝑑(𝑎,𝑥))

であることから直ちに従う。

各𝑓𝑖(𝑥)が収束する場合は

|𝑓𝑖(𝑥)−𝑙𝑖|≤𝜔𝑎𝑖(𝑑(𝑎,𝑥))

となる度合い関数𝜔𝑎𝑖が存在し、 新しい度合い関数を𝜔𝑎(𝑟)=max{𝜔𝑎1(𝑟),…,𝜔𝑎𝑀(𝑟)}として取ると、

𝑑(𝐿,𝐹(𝑥))=(𝑓1(𝑥)−𝑙1)2+…+(𝑓𝑀(𝑥)−𝑙𝑀)2≤𝜔𝑎1(𝑑(𝑎,𝑥))2+…+𝜔𝑎𝑀(𝑑(𝑎,𝑥))2≤𝑀𝜔𝑎(𝑑(𝑎,𝑥))

なので𝐹(𝑥)も収束する。

今後𝑁変数関数の極限や連続性もℝ𝑀値に拡張すべきだが、実数値の場合だけ記してℝ𝑀値の場合の定義等は省略する。

𝑁変数関数は点(𝑎1,…,𝑎𝑁)から点(𝑥1,…,𝑥𝑁)の距離が

𝑑((𝑎1,…,𝑎𝑁),(𝑥1,…,𝑥𝑁))=(𝑥1−𝑎1)2+…+(𝑥𝑁−𝑎𝑁)2

で与えられることから以下のようにして定義される。

定義 4 (多変数関数の極限)

𝑓をℝ𝑁の部分集合𝑋上で定義された𝑁変数実数値関数、(𝑎1,…,𝑎𝑁)を𝑋の極限点、𝑙を実数とする。 𝑁変数関数𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)が(𝑥1,…,𝑥𝑁)→(𝑎1,…,𝑎𝑁)で実数𝑙に収束するあるいは𝑙が𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)の(𝑥1,…,𝑥𝑁)→(𝑎1,…,𝑎𝑁)での極限であるとは 度合い関数𝜔(𝑎1,…,𝑎𝑁)が存在し任意の(𝑥1,…,𝑥𝑁)∈𝑋に対して

|𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)−𝑙|≤𝜔(𝑎1,…,𝑎𝑁)((𝑥1−𝑎1)2+…+(𝑥𝑁−𝑎𝑁)2)

が成り立つことをいう。

極限が定義できると一変数関数と同様に連続性が定義できる。 以下では多変数関数の場合を述べるが、空間上の関数でも同様である。

定義 5 (多変数関数の連続性)

𝑓をℝ𝑁の部分集合𝑋上で定義された𝑁変数実数値関数、(𝑎1,…,𝑎𝑁)を𝑋の極限点であり𝑋は(𝑎1,…,𝑎𝑁)を元として含むとする。 ここで𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)が(𝑥1,…,𝑥𝑁)→(𝑎1,…,𝑎𝑁)で𝑓(𝑎1,…,𝑎𝑁)に収束する、つまり

lim(𝑥1,…,𝑥𝑁)→(𝑎1,…,𝑎𝑁)𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)=𝑓(𝑎1,…,𝑎𝑁)

の時、関数𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)は点(𝑥1,…,𝑥𝑁)=(𝑎1,…,𝑎𝑁)であるいは関数𝑓は点(𝑎1,…,𝑎𝑁)で連続であるという。

定義 6 (多変数連続関数)

𝑓をℝ𝑁の部分集合𝑋上で定義された𝑁変数実数値関数として、𝑋の点はすべて𝑋の極限点であるとする。 ここで、すべての点(𝑎1,…,𝑎𝑁)∈𝑋で𝑓が連続である時、関数𝑓は集合𝑋上の連続関数であるという。

注意 7

以上のことをまとめると𝑁変数実数値関数𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)が(𝑥1,…,𝑥𝑁)=(𝑎1,…,𝑎𝑁)で連続であることは度合い関数𝜔(𝑎1,…,𝑎𝑁)が存在し

|𝑓(𝑥1,…,𝑥𝑁)−𝑓(𝑎1,…,𝑎𝑁)|≤𝜔(𝑎1,…,𝑎𝑁)((𝑥1−𝑎1)2+…+(𝑥𝑁−𝑎𝑁)2)

が成り立つことと同値である。

多変数あるいは空間上の連続関数の典型例として射影と距離が挙げられる。

命題 8 (射影の連続性)

𝑖=1,…,𝑁として、以下の射影は連続関数である。

proj𝑖:𝑥1∈ℝ,…,𝑥𝑁∈ℝ↦𝑥𝑖∈ℝ.

証明

不等式

|𝑥𝑖−𝑎𝑖|≤(𝑥1−𝑎1)2+…+(𝑥𝑁−𝑎𝑁)2.

が成り立つことからすぐわかる。

命題 9 (距離の連続性)

点𝑎̂∈ℝ𝑁を固定し、距離から定まる関数𝑓(𝑥)=𝑑(𝑎̂,𝑥)はℝ𝑁上の連続関数である。

証明

三角不等式より

|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)|=|𝑑(𝑎̂,𝑥)−𝑑(𝑎̂,𝑎)|≤𝑑(𝑎,𝑥)

なので、𝑓は連続関数である。

注意 10

実は距離を定める関数𝑑はℝ𝑁×ℝ𝑁上の連続関数である。 実際、三角不等式より

|𝑑(𝑥,𝑦)−𝑑(𝑎,𝑏)|=|(𝑑(𝑥,𝑦)−𝑑(𝑎,𝑦))+(𝑑(𝑎,𝑦)−𝑑(𝑎,𝑏))|≤𝑑(𝑎,𝑥)+𝑑(𝑏,𝑦)≤2𝑑(𝑎,𝑥)2+𝑑(𝑏,𝑦)2

で、これは𝑑が連続関数であることを意味している。

一変数関数同様に以下の連続性に関する性質がある。

命題 11 (点列連続性)

関数𝑓(𝑥)が点𝑥=𝑎で連続であることは

𝑎に収束する任意の点列(𝑎𝑛)に対して、数列(𝑓(𝑎𝑛))が𝑓(𝑎)に収束する

ことと同値である。

証明

𝑓(𝑥)が𝑥=𝑎で連続として、𝑎に収束する点列(𝑎𝑛)を考える。 𝜀>0に対して、連続性からある𝛿>0が存在して𝑑(𝑎,𝑥)<𝛿を満たす任意の点𝑥に対して|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)|<𝜀である。 さらにこの𝛿>0に対して、数列の収束から自然数𝑁が存在して𝑛≥𝑁を満たす任意の自然数𝑛に対して𝑑(𝑎,𝑎𝑛)<𝛿である。 よって、𝑥として𝑎𝑛を考えることで、十分大きいすべての𝑛に対して|𝑓(𝑎𝑛)−𝑓(𝑎)|<𝜀、つまり𝑓(𝑎𝑛)→𝑓(𝑎)を得る。

逆に𝑎に収束する任意の点列(𝑎𝑛)に対して𝑓(𝑎𝑛)→𝑓(𝑎)のとき、𝑓の連続性を示すが、背理法で連続でなかったとする。 この時、ある𝜀>0が存在して、任意の𝛿>0に対して𝑑(𝑎,𝑥)<𝛿かつ|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)|≥𝜀となる点𝑥が存在する。 ここで𝑛=1,2,3,…ごとに𝛿=1𝑛を考えて上記の条件を満たす𝑥が存在することからそのうち一つを𝑎𝑛とおく。 そうして点列(𝑎𝑛)𝑛=1∞を定めるとき、𝑑(𝑎,𝑎𝑛)<1𝑛なので(𝑎𝑛)は𝑎に収束する。 一方で|𝑓(𝑎𝑛)−𝑓(𝑎)|≥𝜀より(𝑓(𝑎𝑛))は𝑓(𝑎)に収束しないので仮定に矛盾する、よって𝑓(𝑥)は𝑥=𝑎で連続である。

命題 12 (連続関数の合成関数)

𝐹を𝑁次元点集合𝑋上のℝ𝑀値関数、𝑔を𝑀次元点集合𝑌上の実数値関数であって𝐹(𝑋)⊂𝑌を満たすとする。

ここで関数𝐹(𝑥)が点𝑥=𝑎∈𝑋で連続で、関数𝑔(𝑦)が点𝑦=𝐹(𝑎)∈𝑌で連続である時、 合成関数𝑔(𝐹(𝑥))は点𝑥=𝑎で連続である。

各種演算は二変数連続関数の典型例である。

命題 13 (演算の連続性)

以下の演算によって定義される関数は連続関数である。

  1. +:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ↦𝑥+𝑦∈ℝ.
  2. −:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ↦𝑥−𝑦∈ℝ.
  3. ×:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ↦𝑥𝑦∈ℝ.
  4. ÷:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ\{0}↦𝑥𝑦∈ℝ.
  5. max:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ↦max{𝑥,𝑦}∈ℝ.
  6. min:𝑥∈ℝ,𝑦∈ℝ↦min{𝑥,𝑦}∈ℝ.

証明

定義域から点(𝑎,𝑏)を固定する。

  1. 三角不等式より

    |(𝑥+𝑦)−(𝑎+𝑏)|=|(𝑥−𝑎)+(𝑦−𝑏)|≤|𝑥−𝑎|+|𝑦−𝑏|≤2(𝑥−𝑎)2+(𝑦−𝑏)2.

    よって加法+はℝ×ℝ上の連続関数である。

  2. 三角不等式より

    |(𝑥−𝑦)−(𝑎−𝑏)|=|(𝑥−𝑎)−(𝑦−𝑏)|≤|𝑥−𝑎|+|𝑦−𝑏|≤2(𝑥−𝑎)2+(𝑦−𝑏)2.

    よって減法−はℝ×ℝ上の連続関数である。

  3. 三角不等式より𝑟=(𝑥−𝑎)2+(𝑦−𝑏)2とおくと

    |𝑥𝑦−𝑎𝑏|=|(𝑥𝑦−𝑥𝑏)+(𝑥𝑏−𝑎𝑏)|≤|𝑥||𝑦−𝑏|+|𝑥−𝑎||𝑏|≤|𝑥−𝑎||𝑦−𝑏|+|𝑎||𝑦−𝑏|+|𝑥−𝑎||𝑏|≤𝑟2+(|𝑎|+|𝑏|)𝑟.

    ここで、各(𝑎,𝑏)ごとにlim𝑟→0+(𝑟2+(|𝑎|+|𝑏|)𝑟)=0より、 乗法×は(𝑎,𝑏)で連続でありℝ×ℝ上の連続関数である。

  4. 最初に(𝑎,𝑏)に十分近い(𝑥,𝑦)のみ考えることで(𝑥−𝑎)2+(𝑦−𝑏)2<|𝑏|2、特に|𝑦−𝑏|≤|𝑏|2で|𝑦|≥|𝑏|2としてよいことに注意する。 三角不等式より𝑟=(𝑥−𝑎)2+(𝑦−𝑏)2とおくと

    |𝑥𝑦−𝑎𝑏|=|𝑥𝑏−𝑎𝑦||𝑏||𝑦|=|(𝑥𝑏−𝑥𝑦)+(𝑥𝑦−𝑎𝑦)||𝑏||𝑦|≤|𝑥||𝑦−𝑏||𝑏||𝑦|+|𝑥−𝑎||𝑏|≤2𝑟2+|𝑏|𝑟|𝑏|2+𝑟|𝑏|.

    ここで、各(𝑎,𝑏)ごとにlim𝑟→0+(2𝑟2+|𝑏|𝑟|𝑏|2+𝑟|𝑏|)=0より、除法÷は(𝑎,𝑏)で連続でありℝ×(ℝ\{0})上の連続関数である。

  5. 一般に

    max{𝑥,𝑦}=𝑥+𝑦2+|𝑦−𝑥|2

    が成り立ち、連続関数の合成になっているので、最大maxはℝ×ℝ上の連続関数である。

  6. 一般に

    min{𝑥,𝑦}=𝑥+𝑦2−|𝑦−𝑥|2

    が成り立ち、連続関数の合成になっているので、最小minはℝ×ℝ上の連続関数である。

連続性を調べるときにしばしば直面するのが𝑁=2で1点(𝑎,𝑏)がくりぬかれた領域では連続だが、その点は極限を考えなければならない場合である。 そのような時は極座標(𝑥,𝑦)=(𝑎+𝑟cos𝜃,𝑏+𝑟sin𝜃) (𝑟>0)を用いるとよい。

命題 14 (極限と極座標)

(𝑎,𝑏)∈ℝ×ℝとして、𝑓を(ℝ×ℝ)\{(𝑎,𝑏)}上で定義された二変数実数値関数とする。 このとき、二変数関数𝑓(𝑥,𝑦)が(𝑥,𝑦)→(𝑎,𝑏)で実数𝑙に収束することの必要十分条件は

lim𝑟→0+sup𝜃|𝑓(𝑎+𝑟cos𝜃,𝑏+𝑟sin𝜃)−𝑙|=0

が成り立つことである。

特に、𝑓をℝ×ℝ上で定義された二変数実数値関数とするとき、 二変数関数𝑓(𝑥,𝑦)が(𝑥,𝑦)=(𝑎,𝑏)で連続であることの必要十分条件は

lim𝑟→0+sup𝜃|𝑓(𝑎+𝑟cos𝜃,𝑏+𝑟sin𝜃)−𝑓(𝑎,𝑏)|=0

が成り立つことである。

例 15

二変数関数

𝑓(𝑥,𝑦)={𝑥𝑦𝑥2+𝑦2((𝑥,𝑦)≠(0,0)),0((𝑥,𝑦)=(0,0))

を考える。 このとき

|𝑓(𝑟cos𝜃,𝑟sin𝜃)−𝑓(0,0)|=|𝑟2cos𝜃sin𝜃|𝑟=𝑟|cos𝜃sin𝜃|≤𝑟→0(𝑟→0).

したがって、𝑓は(0,0)で連続であるので、ℝ×ℝ上の連続関数である。

例 16

二変数関数

𝑓(𝑥,𝑦)={𝑥𝑦𝑥2+𝑦2((𝑥,𝑦)≠(0,0)),0((𝑥,𝑦)=(0,0))

を考える。 この関数は原点(0,0)を除いた領域では連続であるが、原点の周りの点(𝑥,𝑦)=(𝑟cos𝜃,𝑟sin𝜃)においては

𝑓(𝑟cos𝜃,𝑟sin𝜃)=cos𝜃sin𝜃

で𝑟→0としたときの極限cos𝜃sin𝜃が𝜃に依る(例えば𝜃=0だとこの値は0だが𝜃=𝜋4だと12で一定でない)。 つまり極限lim(𝑥,𝑦)→(0,0)𝑓(𝑥,𝑦)が存在しないので、𝑓(𝑥,𝑦)は(𝑥,𝑦)=(0,0)で連続でない。

開集合と閉集合と有界閉集合

点集合𝐴を考える。 つまり、𝐴は𝑁次元空間ℝ𝑁の部分集合である。

𝐴が開集合であるとは境界がないつまり開いているということで、境界上の点はどんなに近くを見ても𝐴の点と𝐴でない点が存在するものなので、次のように表現される。

定義 1 (開集合)

𝐴を𝑁次元点集合とする。 ここで、任意の点𝑎∈𝐴に対して半径𝑟>0が存在して𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐴が成り立つとき、𝐴は開集合であるという。

閉集合は何かについて閉じているということであるが、極限について閉じている場合をいい、以下のとおりである。

定義 2 (閉集合)

𝐴を𝑁次元点集合とする。 ここで、任意の収束する𝐴上の点列(𝑎𝑛) (𝑎𝑛∈ℝ𝑁)に対して極限𝑎が𝐴の元であるとき、𝐴は閉集合であるという。

注意 3

定義より空集合∅と空間全体ℝ𝑁はともに開集合であり閉集合でもある。

開集合と閉集合は次の命題の意味で表裏の関係にある。

命題 4 (開集合と閉集合の関係)

𝐴を𝑁次元点集合とする。

  • 𝐴が開集合であるとき、補集合𝐴𝑐は閉集合である。
  • 𝐴が閉集合であるとき、補集合𝐴𝑐は開集合である。

証明

  • 𝐴を開集合とするとき、補集合𝐴𝑐上の収束する点列(𝑎𝑛)と極限𝑎を考える。 ここでもし𝑎∈𝐴だとすると𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐴となる半径𝑟>0が存在する。 ここで点列の収束性から十分大きい自然数𝑛に対して𝑎𝑛∈𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐴であり、𝑎𝑛∈𝐴𝑐に矛盾する。 したがって𝑎∈𝐴𝑐なので、𝐴𝑐は閉集合である。
  • 𝐴を閉集合として、補集合𝐴𝑐上の点𝑎∈𝐴𝑐を考える。 ここでもし𝐴𝑐が開集合でないとすると、任意の𝑟>0に対して𝑑(𝑎,𝑥)<𝑟かつ𝑥∈(𝐴𝑐)𝑐=𝐴となる点𝑥が存在する。 ここで𝑛=1,2,3,…ごとに𝑟=1𝑛を考えて上記の条件を満たす𝑥が存在することからそのうち一つを𝑎𝑛とおく。 そうして点列(𝑎𝑛)𝑛=1∞を定めるとき、(𝑎𝑛)は𝐴上の点列であり𝑎∈𝐴𝑐に収束するがこれは𝐴が閉集合であることに矛盾する。 したがって𝐴𝑐は開集合である。

開集合・閉集合の判定は連続関数をもとに考えるとよい。

命題 5 (開集合・閉集合と連続関数)

𝑓(𝑥)を𝑁次元空間上の連続関数とする。 このとき、次の𝑁次元点集合はいずれも開集合である。

  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)≠0}=𝑓−1(ℝ\{0}).
  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)<0}=𝑓−1((−∞,0)).
  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)>0}=𝑓−1((0,+∞)).

また、次の𝑁次元点集合はいずれも閉集合である。

  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)=0}=𝑓−1({0}).
  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)≤0}=𝑓−1((−∞,0]).
  • {𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)≥0}=𝑓−1([0,+∞)).

証明

𝐴={𝑥∈ℝ𝑁|𝑓(𝑥)≤0}が閉集合であることを示す。 𝐴上の収束する点列(𝑎𝑛)とその極限𝑎を考える。 このとき、𝑓(𝑎𝑛)≤0であり、𝑓が連続関数なので𝑓(𝑎𝑛)→𝑓(𝑎)であることから、𝑓(𝑎)≤0が従う。 よって、𝑎∈𝐴であるから、𝐴は閉集合である。

≤が=や≥になっている場合も同様に示される。 開集合の方は任意の集合𝐵に対して𝑓−1(𝐵)=(𝑓−1(𝐵𝑐))𝑐から従う。

注意 6

一般に定義域も値域も開集合・閉集合が定義されるような集合(位相空間という)であるならば、 開集合の連続関数による逆像は開集合で、閉集合の連続関数による逆像は閉集合となっている。

開集合・閉集合は共通部分と和集合について閉じている。

命題 7 (開集合・閉集合の演算)

𝐴, 𝐵を𝑁次元点集合とする。

  • 𝐴, 𝐵が開集合であるとき、共通部分𝐴∩𝐵も開集合である。
  • 𝐴, 𝐵が開集合であるとき、和集合𝐴∪𝐵も開集合である。
  • 𝐴, 𝐵が閉集合であるとき、共通部分𝐴∩𝐵も閉集合である。
  • 𝐴, 𝐵が閉集合であるとき、和集合𝐴∪𝐵も閉集合である。

証明

  • 𝐴, 𝐵が開集合として、共通部分𝐴∩𝐵を考える。 任意の点𝑎∈𝐴∩𝐵を固定すると、 𝑎∈𝐴で𝐴は開集合なので、𝐵𝑟𝐴(𝑎)⊂𝐴となる半径𝑟𝐴>0が存在し、 𝑎∈𝐵で𝐵は開集合なので、𝐵𝑟𝐵(𝑎)⊂𝐵となる半径𝑟𝐵>0が存在する。 よって𝑟=min{𝑟𝐴,𝑟𝐵}>0とおくと、𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐴∩𝐵となるので、𝐴∩𝐵は開集合である。
  • 𝐴, 𝐵が開集合として、和集合𝐴∪𝐵を考える。 任意の点𝑎∈𝐴∪𝐵を固定する。

    • 𝑎∈𝐴のとき、𝐴は開集合なので、𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐴⊂𝐴∪𝐵となる半径𝑟>0が存在する。
    • 𝑎∈𝐵のとき、𝐵は開集合なので、𝐵𝑟(𝑎)⊂𝐵⊂𝐴∪𝐵となる半径𝑟>0が存在する。

    よっていずれの場合でも𝐴∪𝐵は開集合であることが示された。

  • 残る閉集合に関する命題はド・モルガンの法則𝐴∩𝐵=(𝐴𝑐∪𝐵𝑐)𝑐, 𝐴∪𝐵=(𝐴𝑐∩𝐵𝑐)𝑐が成り立つことから従う。

有界な閉集合である有界閉集合が一次元での有界閉区間に相当し今後いろいろなところで出てくる。

命題 8

有界閉矩形は有界閉集合である。

証明

有界閉矩形[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]上の点列(𝑥𝑛)=((𝑥𝑛1,…,𝑥𝑛𝑁))が𝑥=(𝑥1,…,𝑥𝑁)に収束したとすると、 各𝑖=1,…𝑁に対して𝑎𝑖≤𝑥𝑛𝑖≤𝑏𝑖なので𝑎𝑖≤𝑥𝑖≤𝑏𝑖、つまり極限𝑥=(𝑥1,…,𝑥𝑁)は[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]の元である。 したがって、[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]は閉集合である。 有界閉矩形は明らかに有界なので、有界閉集合である。

定理 9 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理)

有界な点列つまりある有界閉矩形上の点列は収束する部分列を持つ。

証明

(𝑥𝑛)=((𝑥𝑛1,…,𝑥𝑛𝑁))を有界閉矩形[𝑎1,𝑏1]×…×[𝑎𝑁,𝑏𝑁]上の点列とする。 このとき、𝑎1≤𝑥𝑛1≤𝑏1であるから、一次元のボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理から部分列(𝑥𝑛𝑘1)であってある実数𝑥1に収束するものが存在する。 さらに𝑎2≤𝑥𝑛𝑘2≤𝑏2であるから、再度一次元のボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理から部分列(𝑥𝑛𝑘𝑗2)であってある実数𝑥2に収束するものが存在する。 これを繰り返していけば点列(𝑥𝑛)のある部分列(𝑥𝑛𝑘)であってある点𝑥=(𝑥1,…,𝑥𝑁)に収束するものが取れる。

系 9.1

𝑋を有界閉集合とする。 このとき任意の𝑋上の点列(𝑎𝑛)に対して、収束する部分列が存在してその極限は𝑋の元である。

証明

𝑋は有界閉矩形で被覆できるので、ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より、点列(𝑎𝑛)は少なくとも部分列を取れば収束する。 さらに𝑋は閉集合なので、極限は𝑋の元である。

𝑁次元空間上の有界閉集合はしばしばコンパクト集合とも呼ばれる。

命題 10

𝑋を有界閉集合として、𝑓を𝑋上の関数、𝑙を定数とする。 ここで任意の収束する点列(𝑎𝑛)に対して(𝑓(𝑎𝑛))が𝑙に収束するとき、 任意の(収束するとは限らない)点列(𝑎𝑛)に対して(𝑓(𝑎𝑛))は𝑙に収束する。

有界閉集合上の点列なので部分列を取れば収束するが、この定理の重要な点は部分列を取らなくても(𝑓(𝑎𝑛))は収束することにある。

証明

(𝑎𝑛)の任意の部分列(𝑎𝑛𝑘)に対して収束部分列(𝑎𝑛𝑘𝑙)が取れて、 仮定より(𝑓(𝑎𝑛𝑘𝑙))は𝑙に収束するので(𝑓(𝑎𝑛))は𝑙に収束する。

最大値最小値定理

一変数関数では有界閉区間に対して成立する最大値最小値定理は多変数関数では有界閉集合に対して自然に拡張される。

定理 1 (最大値最小値定理)

関数𝑓を空でない有界閉集合𝑋上の実数値連続関数とする。 この時、関数𝑓は𝑋上で最大と最小を持つ。

証明は区間縮小法によってもできるが、ここではボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理を用いた簡潔なものを紹介する。

証明

最大について示す。 𝑓の𝑋上の上限を𝑙∈ℝ̄とおくと、𝑋が空集合でないので𝑙≠−∞であり、𝑓(𝑎𝑛)→𝑙となる𝑋上の点列(𝑎𝑛)が存在する。 ここで𝑋は有界閉集合より(𝑎𝑛)は収束する部分列(𝑎𝑛𝑘)をもち極限を𝑎∈𝑋とおくと、𝑓は連続関数なので𝑓(𝑎𝑛𝑘)→𝑓(𝑎)である。 よって𝑙=𝑓(𝑎)であり、上限を達成することができたので、𝑓は𝑋上で最大となる。

最小についても同様なので証明は省略する。

この定理からすぐわかる例として𝐴を空でない有界閉集合、𝑥を点とすると、連続関数𝑓(𝑎)=𝑑(𝑎,𝑥)は𝐴上で最大値と最小値を持つことが挙げられる。 実際には最小値については有界性が必要ない。

命題 2

𝐴を空でない閉集合、𝑥を点とすると、距離関数𝑓(𝑎)=𝑑(𝑎,𝑥)は𝐴上で最小値を持つ。

証明

𝐴は空集合でないので、半径𝑅を十分大きく取ると𝐴と閉円板𝐵𝑅(𝑥)は共通部分を持つ。 そのため連続関数𝑓(𝑎)は𝐴∩𝐵𝑅(𝑥)上で最大値と最小値を取る。 最小値を𝑓(𝑎̂)とおくと、𝑑(𝑎̂,𝑥)≤𝑅より𝑓(𝑎̂)≤𝑅である。 𝐵𝑅(𝑥)の外では𝑓(𝑎)=𝑑(𝑎,𝑥)の値は𝑅より大きいので、𝑓(𝑎̂)は𝐴上の最小値にもなっている。

この最小値を集合𝐴から点𝑥への距離といい、𝑑(𝐴,𝑥)と表す。

命題 3

空でない閉集合𝐴から点𝑥の距離関数𝑓(𝑥)=𝑑(𝐴,𝑥)は連続関数である。

証明

𝑥,𝑦∈ℝ𝑁に対して𝑑(𝐴,𝑥)=𝑑(𝑎,𝑥)となる点𝑎∈ℝ𝑁が存在するので、

𝑑(𝐴,𝑦)−𝑑(𝐴,𝑥)=𝑑(𝐴,𝑦)−𝑑(𝑎,𝑥)≤𝑑(𝑎,𝑦)−𝑑(𝑎,𝑥)≤𝑑(𝑥,𝑦)

が成り立つ。 𝑥と𝑦を入れ替えて同様のことをすれば|𝑑(𝐴,𝑦)−𝑑(𝐴,𝑥)|≤𝑑(𝑥,𝑦)がわかり、𝑑(𝐴,𝑥)は𝑥について連続である。

ここから直ちに次がわかる。

定理 4 (最小距離)

𝐴を空でない有界閉集合、𝐵を空でない閉集合とすると、距離関数𝑑(𝑥,𝑦)は𝐴×𝐵上で最小値を持つ。

多変数の中間値の定理

最大値最小値定理と比較して中間値の定理は幾分人工的な拡張である。

まず、𝑁次元の議論を一次元に帰着させるために弧状連結性を導入する。

定義 1 (弧状連結)

𝑋を𝑁次元点集合とする。 ここで、𝑋の任意の二点𝑥, 𝑦に対して𝑥と𝑦を結ぶ𝑋上の連続な曲線𝑐:[0,1]→𝑋が存在するとき、𝑋は弧状連結であるという。

定理 2 (中間値の定理)

関数𝑓を弧状連結な集合𝑋上の実数値連続関数とする。 このとき、任意の𝑥,𝑦∈𝑋に対して、𝑓は𝑋上で𝑓(𝑥)と𝑓(𝑦)の間の値を全て取る。 言い換えると、簡単のため𝑓(𝑥)≤𝑓(𝑦)とすると、[𝑓(𝑥),𝑓(𝑦)]⊂𝑓(𝑋)である。

注意 3

この定理は抽象化すると弧状連結集合の連続関数による像は弧状連結であると表現できる。

証明

弧状連結性から𝑥と𝑦を結ぶ𝑋上の連続な曲線𝑐:[0,1]→𝑋が存在する。 ここで𝑓と𝑐の合成関数𝑓(𝑐(𝑡)):[0,1]→ℝは連続関数であり𝑓(𝑐(0))=𝑓(𝑥), 𝑓(𝑐(1))=𝑓(𝑦)なので、一変数での中間値の定理から𝑓(𝑥)と𝑓(𝑦)の間の値を全て取る。 よって、𝑓は𝑓(𝑥)と𝑓(𝑦)の間の値を全て取る。

この定理は実質的に一変数の中間値の定理と同等である。 より多次元らしさがある拡張が次のブラウアーの不動点定理として知られる定理である。

定理 4 (ブラウアーの不動点定理)

有界閉矩形𝐸からそこへの連続な変換𝐹は不動点、つまり𝐹(𝑥)=𝑥となる点𝑥∈𝐸を持つ。

しかしながらブラウアーの不動点定理の証明は大変難しく本テキストの範囲を逸脱するので詳細は省略する。

中間値の定理(の高次元版)は弧状連結の定義から直ちに従ったが、偏微分に関するいくつかの定理を考える際には曲線を軸に沿った折れ線で取り直す必要がある。 次の補題はそのことを保証する。

補題 5

𝑋をℝ𝑁の開集合として、𝑋の二点を結ぶ𝑋上の連続な曲線𝑐:[0,1]→𝑋が存在するとする。 この時、ある𝑙>0が存在して曲線上のすべての点𝑐(𝑡)=(𝑥1,…,𝑥𝑁)に対して、[𝑥1−𝑙,𝑥1+𝑙]×…×[𝑥𝑁−𝑙,𝑥𝑁+𝑙]⊂𝑋が成り立つ。 特にそのような二点は𝑥1,…,𝑥𝑁軸に並行ないくつかの線分で結ばれる。

証明

曲線を𝐶、𝑋の補集合を𝑋𝑐とおいて、関数𝑥∈𝐶,𝑦∈𝑋𝑐↦𝑑(𝑥,𝑦)が正の最小値を持つことを示せばよい。 まず𝑋=ℝ𝑁の時は𝑙は何でもよいので、除外する。 仮定より、𝐶は空でない有界閉集合で𝑋𝑐は閉集合でなので、定理 4 より最小距離𝑚が存在する。 あとは𝑙=1𝑁𝑚とすればよい。

一様連続性

一変数の時と同様に多変数でも一様連続性が定義され、いくつかの場面で登場する。

定義 1 (一様連続関数)

𝑁次元点集合𝑋上の実数値関数𝑓に対して、度合い関数𝜔が存在して任意の𝑥,𝑦∈𝑋に対して

|𝑓(𝑦)−𝑓(𝑥)|≤𝜔(𝑑(𝑥,𝑦))

が成り立つとき、𝑓は𝑋上の一様連続関数であるという。

重要なこととして有界閉集合上の連続関数は自動的に一様連続関数である。

定理 2 (有界閉集合上の連続関数、ハイネ・カントールの定理)

有界閉集合𝑋上の実数値連続関数𝑓は𝑋上一様連続である。

証明

𝑓が一様連続でないと仮定すると、ある𝜀>0が存在して任意の𝛿>0に対して𝑥,𝑦∈𝑋, 𝑑(𝑥,𝑦)<𝛿が存在して|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑦)|≥𝜀である。 ここで𝑛=1,2,3,…に対して𝛿=𝑛−1として取れば、𝑥𝑛,𝑦𝑛∈𝑋が存在して𝑑(𝑥𝑛,𝑦𝑛)<𝑛−1, |𝑓(𝑥𝑛)−𝑓(𝑦𝑛)|≥𝜀が成り立つ。 𝑋は有界閉集合なのでボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より部分列を取れば数列(𝑥𝑛), (𝑦𝑛)は収束し極限をそれぞれ𝑥̄, 𝑦̄とおくと、 𝑑(𝑥𝑛,𝑦𝑛)<𝑛−1→0より𝑥̄=𝑦̄である。 さらに𝑥̄=𝑦̄∈𝑋もわかる。 ここで、𝑓は𝑥̄=𝑦̄で連続より

𝜀≤|𝑓(𝑥𝑛)−𝑓(𝑦𝑛)|→|𝑓(𝑥̄)−𝑓(𝑦̄)|=0

となり矛盾が導かれた。 よって関数𝑓は𝑋上一様連続である。

リプシッツ連続性

一変数の時同様多変数でもリプシッツ連続性が定義され、いくつかの場面で登場する。

定義 1 (リプシッツ連続関数)

𝑁次元点集合𝑋上の実数値関数𝑓に対して、非負の定数𝐿が存在して任意の𝑥,𝑦∈𝑋に対して

|𝑓(𝑦)−𝑓(𝑥)|≤𝐿𝑑(𝑥,𝑦)

が成り立つとき、𝑓は𝑋上のリプシッツ連続関数であるという。 そのような𝐿の下限をリプシッツ連続関数𝑓のリプシッツ定数という。

リプシッツ連続関数は定義域が何であれ全体集合に拡張できる。

定理 2 (リプシッツ連続関数の拡張)

𝑓を𝑁次元点集合𝑋上のリプシッツ連続関数で𝐿をそのリプシッツ定数とする。 この時、𝑁次元空間上の関数𝑓̃を𝑥∈ℝ𝑁に対して

𝑓̃(𝑥)=inf𝑎∈𝑋(𝑓(𝑎)+𝐿𝑑(𝑎,𝑥))

で定めるとき、 関数𝑓̃はすべての𝑥∈𝑋に対して𝑓̃(𝑥)=𝑓(𝑥)を満たすℝ𝑁上のリプシッツ連続関数でそのリプシッツ係数は𝐿である。

証明

まず、任意の𝑥,𝑦∈ℝ𝑁と𝜀>0に対して𝑓̃(𝑥)≥𝑓(𝑎)+𝐿𝑑(𝑎,𝑥)−𝜀となる点𝑎∈𝑋が存在するので、𝑓̃(𝑥)でも同じ𝑎を取れば三角不等式より、

𝑓̃(𝑦)−𝑓̃(𝑥)≤𝐿𝑑(𝑎,𝑦)−𝐿𝑑(𝑎,𝑥)+𝜀≤𝐿𝑑(𝑥,𝑦)+𝜀.

ここから𝑓̃はℝ𝑁上のリプシッツ連続関数でリプシッツ定数は𝐿以下であることがわかる。 次に𝑥∈𝑋に対して𝑎として𝑥を取れば

𝑓̃(𝑥)≤𝑓(𝑥)+𝐿𝑑(𝑥,𝑥)=𝑓(𝑥)

が成り立ち、 𝑓のリプシッツ連続性を使えば任意の𝑎∈𝑋に対して

𝑓(𝑎)+𝐿𝑑(𝑎,𝑥)≥𝑓(𝑥)

なので𝑓̃(𝑥)≥𝑓(𝑥)も成り立つ。 したがって𝑥∈𝑋で𝑓̃(𝑥)=𝑓(𝑥)であり、𝑓̃のリプシッツ係数は𝐿である。