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級数

級数の収束

数列(𝑎𝑛)の項𝑎0,𝑎1,𝑎2,𝑎3,…の和について考える。 このような和のことを級数と呼び、形式的には

∑𝑛=0∞𝑎𝑛=𝑎0+𝑎1+𝑎2+𝑎3+…

と表すが、無限個の項の和なのでしっかり定義する必要がある。

定義 1 (級数)

𝑀を整数として数列(𝑎𝑛)𝑛=𝑀∞を考える。 整数𝑁≥𝑀に対して、初項𝑎𝑀から項𝑎𝑁までの部分和

𝐴𝑁=∑𝑛=𝑀𝑁𝑎𝑛=𝑎𝑀+…𝑎𝑁

を定義する。 部分和を並べて得られる数列(𝐴𝑁)𝑁=𝑀∞がある数𝐴に収束する時、 級数∑𝑛=𝑀∞𝑎𝑛は収束するといい、この時の極限𝐴を数列(𝑎𝑛)𝑛=𝑀∞の級数の値または和と呼び∑𝑛=𝑀∞𝑎𝑛で表す。 また、部分和の数列(𝐴𝑁)𝑁=𝑀∞が発散するとき、級数∑𝑛=𝑀∞𝑎𝑛は発散するという。 級数の表記は

∑𝑛=𝑀∞𝑎𝑛,∑𝑛∈ℕ𝑎𝑛,∑𝑛𝑎𝑛,∑𝑎𝑛

などがある。

例 2 (等比級数)

𝑐を実数として等比数列(𝑐𝑛)𝑛=0∞を考える。 対応する級数

∑𝑛=0∞𝑐𝑛=1+𝑐+𝑐2+𝑐3+…

を等比級数という。 𝑐≠1の時、部分和は

∑𝑛=0𝑁𝑐𝑛=𝑐𝑁+1−1𝑐−1=1−𝑐𝑁+11−𝑐

であり、−1<𝑐<1のとき収束し級数の値は

∑𝑛=0∞𝑐𝑛=11−𝑐

である。 それ以外の𝑐の場合は発散する。 𝑐=1の場合も∑𝑛=0𝑁𝑐𝑛=𝑁より発散する。

次の命題は級数が収束する必要条件を与える。

命題 3

数列(𝑎𝑛)に対して、級数∑𝑎𝑛が収束するならば数列(𝑎𝑛)は0に収束する。

証明

各𝑛に対して、

𝑎𝑛+1=𝐴𝑛+1−𝐴𝑛

が成り立つ。 級数∑𝑎𝑛が収束するため、(𝐴𝑛)と(𝐴𝑛+1)はともに和𝐴に収束することから、 数列(𝑎𝑛+1)ひいては(𝑎𝑛)は𝐴−𝐴=0に収束する。

注意 4

この命題の逆は成立しない。 例えば𝑛=1,2,3,…に対して𝑎𝑛=1𝑛とおいた級数

∑𝑛=1∞1𝑛=11+12+13+…

は収束しない。 実際、

𝐴22=1+12+13+14>1+12+14+14=1+12+12,𝐴23=1+12+13+14+15+16+17+18>1+12+14+14+18+18+18+18=1+12+12+12

で、 続けると

𝐴2𝑘>1+𝑘2

がわかり、これは収束しない。

級数(数列)の中でも特別なのが次の正項級数である。

定義 5 (正項級数)

数列(𝑎𝑛)が各𝑛に対して𝑎𝑛≥0を満たすとき、級数∑𝑎𝑛を正項級数という。

命題 6

正項級数∑𝑎𝑛が収束するための必要十分条件は部分和の数列(𝐴𝑁)が上に有界であることである。

証明

∑𝑎𝑛が正項級数であることから、各𝑁∈ℕに対して

𝐴𝑁+1−𝐴𝑁=𝑎𝑁+1≥0

より、数列(𝐴𝑁)は単調増加である。 したがって(𝐴𝑁)が上に有界ならば、単調収束定理より、収束する。 逆は収束する実数列は有界であることから従う。

このため正項級数の場合に限って級数∑𝑎𝑛が収束することを

∑𝑎𝑛<∞

と表し、発散することを

∑𝑎𝑛=∞

と表す。

定義 7 (級数の絶対収束と条件収束)

級数∑𝑎𝑛に対して正項級数∑|𝑎𝑛|が収束するとき、級数∑𝑎𝑛は絶対収束するという。 絶対収束しないが収束するとき、級数は条件収束するという。

命題 8

級数∑𝑎𝑛が絶対収束するならばそれは収束している。

証明

(𝑎𝑛)の初項から𝑎𝑁までの部分和を𝐴𝑁と、(|𝑎𝑛|)の初項から|𝑎𝑁|までの部分和を𝐴̄𝑁とおく。 ここで各𝑀,𝑁に対して、𝑀≤𝑁ならば

𝐴𝑁−𝐴𝑀=∑𝑛=𝑀+1𝑁𝑎𝑛≤∑𝑛=𝑀+1𝑁|𝑎𝑛|=𝐴̄𝑁−𝐴̄𝑀

で、𝑀≥𝑁ならば

𝐴𝑁−𝐴𝑀=−∑𝑛=𝑁+1𝑀𝑎𝑛≤∑𝑛=𝑁+1𝑀|𝑎𝑛|=𝐴̄𝑀−𝐴̄𝑁

なので、常に

𝐴𝑁−𝐴𝑀≤|𝐴̄𝑁−𝐴̄𝑀|

が成り立つ。 よって𝑁について上極限を𝑀について下極限をそれぞれ取ると、𝐴̄𝑁と𝐴̄𝑀は仮定より収束することに注意して、

lim sup𝑁→∞𝐴𝑁−lim inf𝑀→∞𝐴𝑀≤|lim𝑁→∞𝐴̄𝑁−lim𝑀→∞𝐴̄𝑀|=0.

したがって上極限と下極限が一致したので𝐴𝑁さらには級数∑𝑎𝑛は収束する。

ここまでくると級数の理論は広義積分の理論と似ていることに気が付く。 つまり、級数の収束は部分和の極限で定義していることは広義積分の積分区間を有界閉区間で近似していたことに対応するし、 級数でも広義積分でも絶対収束が登場する。 実際、次の命題は級数版の比較判定法である。

命題 9 (級数の比較判定法)

(𝑎𝑛)を数列とする。

  • 二つの条件

    |𝑎𝑛|≤𝑏𝑛∀𝑛,∑𝑏𝑛<∞

    を満たす正項級数∑𝑏𝑛が存在するならば、 級数∑𝑎𝑛は絶対収束し、

    |∑𝑎𝑛|≤∑|𝑎𝑛|≤∑𝑏𝑛

    が成り立つ。

  • 二つの条件

    |𝑎𝑛|≥𝑏𝑛∀𝑛,∑𝑏𝑛=∞

    を満たす正項級数∑𝑏𝑛が存在するならば、 級数∑𝑎𝑛は絶対収束せず、

    ∑|𝑎𝑛|=∞

    である。

級数を等比級数と比較することで収束性をある程度判定することができる。

定理 10 (ダランベールの判定法)

(𝑎𝑛)をどの項も0でない数列とする。 極限

𝑐=lim𝑛→∞|𝑎𝑛+1𝑎𝑛|

が存在し、𝑐<1ならば級数∑𝑎𝑛は絶対収束し、𝑐>1ならば級数∑𝑎𝑛は発散する。

定理 11 (コーシーの判定法)

(𝑎𝑛)を数列とする。 上極限

𝑐=lim sup𝑛→∞|𝑎𝑛|𝑛

について、𝑐<1ならば級数∑𝑎𝑛は絶対収束し、𝑐>1ならば級数∑𝑎𝑛は発散する。

例 12

級数

∑𝑛=0∞𝑛2𝑛=01+12+222+323+…

は(絶対)収束する。 実際、𝑎𝑛=𝑛2𝑛とおくと、𝑛→∞で

|𝑎𝑛+1𝑎𝑛|=𝑛+12𝑛+1𝑛2𝑛=𝑛+12𝑛=1+1𝑛2→12<1

より、ダランベールの判定法が使えて、収束する。

どちらの判定法も𝑐=1の場合は級数が収束するか発散するかわからない。

例 13

級数

∑𝑛=1∞1𝑛2=112+122+132+…

ではダランベールの判定法とコーシーの判定法はともに𝑐=1となってしまい、級数が収束するか発散するか判定できない。 実際にはすぐ次でわかる通り収束する。

このような級数に対しては次の定理で広義積分の判定に帰着させるとよい。

定理 14 (級数と広義積分の比較)

𝑀を整数として、𝑓を[𝑀,∞)上定義された単調減少する非負値の関数とする。 このとき(正項)級数

∑𝑛=𝑀∞𝑓(𝑛)

が収束することと広義積分

∫𝑀∞𝑓(𝑥)d𝑥

が収束することは同値である。

証明

整数𝑁≥𝑀に対して、単調減少での和と積分の関係(<t_sum_int_monotone>)より

∫𝑀𝑁𝑓(𝑥)d𝑥+𝑓(𝑁)≤∑𝑛=𝑀𝑁𝑓(𝑛)≤∫𝑀𝑁𝑓(𝑥)d𝑥+𝑓(𝑀)

であり、𝑓は非負値であることから

∫𝑀𝑁𝑓(𝑥)d𝑥≤∑𝑛=𝑀𝑁𝑓(𝑛)≤∫𝑀𝑁𝑓(𝑥)d𝑥+𝑓(𝑀)

が成り立つ。 よって、∫𝑀∞𝑓(𝑥)d𝑥<∞なら∑𝑛=𝑀∞𝑓(𝑛)<∞であり、 ∫𝑀∞𝑓(𝑥)d𝑥=∞なら∑𝑛=𝑀∞𝑓(𝑛)=∞がわかる。

例えば次のことがわかる。

命題 15

𝑎を実数とするとき、

∑𝑛=0∞𝑛𝑎{=∞(𝑎≥−1),<∞(𝑎<−1)

が成り立つ。

交代級数と条件収束

各項の符号が常に正(正確には非負)なのが正項級数であったが、項の符号が順番に入れ替わっていく級数を考える。

定義 1 (交代級数)

実数列(𝑎𝑛)が各𝑛∈ℕに対して

𝑎𝑛𝑎𝑛+1≤0

を満たすとき、級数∑𝑎𝑛を交代級数という。 つまり交代級数∑𝑎𝑛は正項級数∑|𝑎𝑛|を使って、∑(−1)𝑛|𝑎𝑛|または∑(−1)𝑛+1|𝑎𝑛|と表すことができる。

絶対収束しない場合でも交代級数であれば収束することがある。 次の定理はある種の交代級数の収束性を保証する。

定理 2 (ライプニッツの判定法)

実数列(𝑎𝑛)𝑛=0∞が単調減少し𝑛→∞で0に収束するとする(特に𝑎𝑛≥0である)。 このとき、交代級数∑𝑛=0∞(−1)𝑛𝑎𝑛は収束し、各𝑁=0,1,2,3,…に対して

|∑𝑛=0𝑁(−1)𝑛𝑎𝑛−∑𝑛=0∞(−1)𝑛𝑎𝑛|≤𝑎𝑁+1

を満たす。

証明

𝑁=0,1,2,3,…に対して部分和を𝐴𝑁=∑𝑛=0𝑁(−1)𝑛𝑎𝑛とおく。 このとき、𝐾=0,1,2,3,…に対して

𝐴2(𝐾+1)=𝐴2𝐾−𝑎2𝐾+1+𝑎2𝐾+2≤𝐴2𝐾,𝐴2(𝐾+1)+1=𝐴2𝐾+1+𝑎2𝐾+2−𝑎2𝐾+3≤𝐴2𝐾+1

より

𝐴1≤𝐴3≤𝐴5≤𝐴7≤…≤𝐴6≤𝐴4≤𝐴2≤𝐴0

がわかる。 したがって単調収束定理より(𝐴2𝐾)𝐾と(𝐴2𝐾+1)𝐾は収束し極限をそれぞれ𝐴と𝐴とおくと𝐴≤𝐴である。 また、ここで

𝐴2𝐾−𝐴2𝐾+1=𝑎2𝐾→0

より𝐴=𝐴である。 𝐴=𝐴=𝐴とおく。 あとは|𝐴𝑁−𝐴|≤𝑎𝑁+1を示す。

  • 𝑁=2𝐾の場合、

    |𝐴𝑁−𝐴|=𝐴2𝐾−𝐴≤𝐴2𝐾−𝐴2𝐾+1=𝑎2𝐾+1=𝑎𝑁+1

    である。

  • 𝑁=2𝐾+1の場合、

    |𝐴𝑁−𝐴|=𝐴−𝐴2𝐾+1≤𝐴2𝐾+2−𝐴2𝐾+1=𝑎2𝐾+2=𝑎𝑁+1

    である。

以上より示すべき不等式が示されて、直ちに𝐴𝑁→𝐴つまり交代級数が収束することが示される。

例 3

交代級数

∑𝑛=1∞(−1)𝑛−1𝑛=11−12+13−…

は対応する正項級数∑𝑛=1∞1𝑛が収束しないので絶対収束しない(注意 4 参照)。 一方で𝑎𝑛=1𝑛はライプニッツの判定法の仮定を満たすので、収束することがわかる。 つまり、条件収束する。

交代級数に対するこの収束の判定法を一般化して次の収束の条件が知られている。

定理 4 (ディリクレの判定法)

𝑀を整数として、実数列(𝑎𝑛)𝑛=𝑀∞は単調減少し𝑛→∞で0に収束するとする。 数列(𝑏𝑛)𝑛=𝑀∞は部分和の数列(𝐵𝑁)が有界、つまりある実数𝐿が存在し任意の𝑁に対して|∑𝑛=𝑀𝑁𝑏𝑛|≤𝐿が成り立つとする。 このとき級数∑𝑛=𝑀∞𝑎𝑛𝑏𝑛は収束する。

証明

まず、部分和を𝑆𝑁=∑𝑛=𝑀𝑁𝑎𝑛𝑏𝑛とおく。 ここで、部分和分より便宜的に𝐵𝑀−1=0とおくことで、

𝑆𝑁=∑𝑛=𝑀𝑁𝑎𝑛(𝐵𝑛−𝐵𝑛−1)=𝑎𝑁+1𝐵𝑁+∑𝑛=𝑀𝑁(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)𝐵𝑛

ここで𝑁→∞とすることを考えると、(𝐵𝑁)が有界で𝑎𝑁→0より𝑎𝑁+1𝐵𝑁→0である。 また、仮定𝑎𝑛+1≤𝑎𝑛を使うと、

|(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)𝐵𝑛|=(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)|𝐵𝑛|≤(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)𝐿

で

∑𝑛=𝑀𝑁(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)𝐿=(𝑎𝑀−𝑎𝑁+1)𝐿≤𝑎𝑀𝐿<∞

なので比較判定法から∑𝑛=𝑀∞(𝑎𝑛−𝑎𝑛+1)𝐵𝑛は(絶対)収束し、 (𝑆𝑁)の収束も示された。

例 5

交代級数の例 3 の類似として級数

∑𝑛=1∞sin2𝜋3𝑛𝑛=321−322+03+…

を考える。 𝑎𝑛=1𝑛, 𝑏𝑛=sin2𝜋3𝑛とするとディリクレの判定法の仮定を満たすので、条件収束することがわかる。

一般に和∑𝑛=𝑀𝑁sin𝑛𝜃は計算できる(後の章を参照)ことから、級数

∑𝑛=1∞sin𝑛𝑛=sin11+sin22+sin33+…

などはやはり条件収束することがわかる。

べき級数

定義 1 (べき級数)

数列(𝑎𝑛)𝑛=0∞と数𝑎と𝑥に対して定まる次の形の級数

∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛=𝑎0+𝑎1(𝑥−𝑎)+𝑎2(𝑥−𝑎)2+𝑎3(𝑥−𝑎)3+…

をべき級数または整級数という。

べき級数は単一の𝑥のみ考えるなら特殊な形の級数であるが、重要な点は𝑥を変数、べき級数を関数と見て議論を展開する点にある。

注意 2

べき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛は𝑥=𝑎のとき𝑎0に必ず収束する。

命題 3 (べき級数の収束性)

べき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛が数𝑥=𝑏 (𝑏≠𝑎)で収束するならば、|𝑥−𝑎|<|𝑏−𝑎|を満たすすべての数𝑥でこのべき級数は絶対収束する。

証明

級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑏−𝑎)𝑛が収束するので、命題 3 より数列(𝑎𝑛(𝑏−𝑎)𝑛)𝑛=0∞は0に収束し、特に有界である。 そこである実数𝑀が存在し、任意の𝑛=0,1,2,3,…に対して|𝑎𝑛(𝑏−𝑎)𝑛|≤𝑀である。 ここで

|𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛|=|𝑎𝑛(𝑏−𝑎)𝑛||𝑥−𝑎𝑏−𝑎|𝑛≤𝑀|𝑥−𝑎𝑏−𝑎|𝑛

であり、|𝑥−𝑎|<|𝑏−𝑎|であることから右辺から定まる正項級数は収束するので、 級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛は絶対収束する。

この命題をもとに各べき級数には固有な次の値が定義できる。

定義 4 (収束半径)

べき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛に対して、 級数として収束するような数𝑥=𝑏を考え|𝑏−𝑎|の上限をべき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛の収束半径という。 収束半径は非負の実数または正の無限大である。

注意 5

𝑟を収束半径とするとき、|𝑥−𝑎|>𝑟に対してはべき級数は必ず発散し、|𝑥−𝑎|<𝑟に対しては先の命題よりべき級数は必ず絶対収束する。 𝑟=∞の場合では任意の𝑥でべき級数は絶対収束する。

注意 6

収束半径という用語に「半径」という単語が入っているのはべき級数の理論を𝑎𝑛や𝑥が複素数の場合に拡張したときに絶対収束が確実に言える𝑥の範囲|𝑥−𝑎|<𝑟が複素平面での円板になっていることによる。 実際、この章の内容は複素数の範囲に拡張でき、後の複素指数関数の部分で使われる。

級数の収束に関するダランベールの判定法やコーシーの判定法から収束半径について次の公式が知られている。

定理 7

べき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛を考える。

  1. さらに(𝑎𝑛)はどの項も0でない数列として、極限

    𝑐=lim𝑛→∞|𝑎𝑛+1𝑎𝑛|

    が存在したとするとき、べき級数の収束半径は逆数𝑐−1となる。

  2. 上極限

    𝑐=lim sup𝑛→∞|𝑎𝑛|𝑛

    について、べき級数の収束半径は逆数𝑐−1となる。

例 8

数𝑐に対してべき級数

∑𝑛=0∞𝑐𝑛𝑥𝑛=1+𝑐𝑥+𝑐2𝑥2+𝑐3𝑥3+…

を考える。

lim𝑛→∞|𝑐𝑛+1𝑐𝑛|=|𝑐|

より、 このべき級数の収束半径は|𝑐|−1である。

例 9

数𝑐に対してべき級数

∑𝑛=0∞𝑐𝑛𝑥2𝑛=1+𝑐𝑥2+𝑐2𝑥4+𝑐3𝑥6+…

を考える。

lim sup𝑛→∞|𝑐𝑛|2𝑛=|𝑐|

より、 このべき級数の収束半径は|𝑐|−1である。

ここからはいよいよ関数としてのべき級数を考えよう。 まず、べき級数∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛の収束半径を𝑟とするとき、関数

𝑓(𝑥)=∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛

が|𝑥−𝑎|<𝑟を満たす数𝑥に対して定義されることに注意する。 また、𝑁=0,1,2,3,…に対して部分和を

𝑓𝑁(𝑥)=∑𝑛=0𝑁𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛

とおく。 この部分和は𝑁次以下の多項式である。

定理 10 (べき級数の連続性)

収束半径が𝑟>0であるべき級数𝑓(𝑥)=∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛は|𝑥−𝑎|<𝑟で連続である。

証明

まずは|𝑥−𝑎|<𝑟, |𝑦−𝑎|<𝑟を満たす数𝑥, 𝑦と自然数𝑁=0,1,2,3,…に対して、

|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑦)|≤|𝑓(𝑥)−𝑓𝑁(𝑥)|+|𝑓𝑁(𝑥)−𝑓𝑁(𝑦)|+|𝑓𝑁(𝑦)−𝑓(𝑦)|≤∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑥−𝑎|𝑛+|𝑓𝑁(𝑥)−𝑓𝑁(𝑦)|+∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑦−𝑎|𝑛

に注意する。 ここで、0<𝑟0<𝑟に対して、級数∑|𝑎𝑛|𝑟0𝑛は収束するので、|𝑥−𝑎|,|𝑦−𝑎|≤𝑟0のとき

∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑥−𝑎|𝑛,∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑦−𝑎|𝑛≤∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛|𝑟0𝑛

で右辺は𝑁→∞で0に収束する。 ここで𝑓𝑁(𝑥)は多項式関数より特に有界閉区間で一様連続なので、度合い関数を使って|𝑓𝑁(𝑥)−𝑓𝑁(𝑦)|≤𝜔𝑁(|𝑥−𝑦|)である。 よって

|𝑓(𝑥)−𝑓(𝑦)|≤2∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛|𝑟0𝑛+𝜔𝑁(|𝑥−𝑦|)

なので、 𝑓(𝑥)は|𝑥−𝑎|≤𝑟0で一様連続であり、|𝑥−𝑎|<𝑟で連続であることがわかる。

定理 11 (べき級数の項別積分)

収束半径が𝑟>0であるべき級数𝑓(𝑥)=∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛に対して

∫𝑎𝑏𝑓(𝑥)d𝑥=∑𝑛=0∞𝑎𝑛𝑛+1(𝑏−𝑎)𝑛+1=𝑎0(𝑏−𝑎)+𝑎12(𝑏−𝑎)2+𝑎23(𝑏−𝑎)3+𝑎34(𝑏−𝑎)4+…

が任意の|𝑏−𝑎|<𝑟を満たす数𝑏に対して成り立つ。

証明

前の定理よりべき級数𝑓(𝑥)は[𝑎,𝑏]上連続より積分可能であることに注意する。 自然数𝑁に対して、

|∫𝑎𝑏𝑓𝑁(𝑥)d𝑥−∫𝑎𝑏𝑓(𝑥)d𝑥|≤|∫𝑎𝑏|𝑓𝑁(𝑥)−𝑓(𝑥)|d𝑥|≤|∫𝑎𝑏∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑥−𝑎|𝑛d𝑥|≤|∫𝑎𝑏∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑏−𝑎|𝑛d𝑥|≤∑𝑛=𝑁+1∞|𝑎𝑛||𝑏−𝑎|𝑛+1.

よって𝑁→∞で最右辺は0に収束することから∫𝑎𝑏𝑓𝑁(𝑥)d𝑥→∫𝑎𝑏𝑓(𝑥)d𝑥であり、

∫𝑎𝑏𝑓𝑁(𝑥)d𝑥=∫𝑎𝑏∑𝑛=0𝑁𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛d𝑥=∑𝑛=0𝑁𝑎𝑛𝑛+1(𝑏−𝑎)𝑛+1

であることから定理の結論が得られる。

定理 12 (べき級数の項別微分)

収束半径が𝑟>0であるべき級数𝑓(𝑥)=∑𝑛=0∞𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛は微分可能で

𝑓′(𝑥)=∑𝑛=1∞𝑛𝑎𝑛(𝑥−𝑎)𝑛−1=∑𝑛=0∞(𝑛+1)𝑎𝑛+1(𝑥−𝑎)𝑛=𝑎1+2𝑎2(𝑥−𝑎)+3𝑎3(𝑥−𝑎)2+…

が任意の|𝑥−𝑎|<𝑟を満たす実数𝑥に対して成り立つ。

証明

まず、べき級数𝑔(𝑥)=∑𝑛=0∞(𝑛+1)𝑎𝑛+1(𝑥−𝑎)𝑛の収束半径が𝑟であることに注意する。 そこで前の定理より𝑔(𝑥)を項別積分すると

∫𝑎𝑏𝑔(𝑥)d𝑥=∑𝑛=0∞𝑎𝑛+1(𝑏−𝑎)𝑛+1=𝑓(𝑏)−𝑎0.

よって、𝑓(𝑥)は𝑔(𝑥)の不定積分と定数差なので、𝑓を微分すると𝑔を得る。

注意 13

べき級数を微分して収束半径が変わらないべき級数になるので、微分することを何回も繰り返すことができ、べき級数は無限回微分可能であることわかる。

種々のべき級数

この節ではこれまでに登場した関数とべき級数を結びつける。 自明なこととして多項式関数はそのままべき級数と見ることができる。

一般の(滑らかな)関数とべき級数を結びつけるのが次の定理でテイラーの定理から直ちに従う。

定理 1

𝑟を正の実数または正の無限大として、数𝑎に対して𝑓(𝑥)を|𝑥−𝑎|<𝑟で無限回微分可能な関数とする。 ここで、|𝑥−𝑎|<𝑟なる数𝑥に対して

lim𝑛→∞sup𝜃∈[0,1]𝑓(𝑛)(𝑎+𝜃(𝑥−𝑎))𝑛!(𝑥−𝑎)𝑛=0

が成り立つならば、

𝑓(𝑥)=∑𝑛=0∞𝑓(𝑛)(𝑎)𝑛!(𝑥−𝑎)𝑛=𝑓(𝑎)+𝑓′(𝑎)(𝑥−𝑎)+𝑓″(𝑎)2(𝑥−𝑎)2+𝑓(3)(𝑎)3!(𝑥−𝑎)3+…(|𝑥−𝑎|<𝑟)

が成り立つ。

このときの式 (0.1) のことを関数𝑓(𝑥)の点𝑥=𝑎でのテーラー展開という。 また、𝑎=0のときのテーラー展開のことをマクローリン展開という。

次の一覧は各種関数のテーラー展開(マクローリン展開)をまとめたものである。

命題 2 (種々の関数のテーラー展開)

𝑥を実数として以下が成立する。

11−𝑥=∑𝑛=0∞𝑥𝑛=1+𝑥+𝑥2+𝑥3+…(|𝑥|<1).exp(𝑥)=𝑒𝑥=∑𝑛=0∞1𝑛!𝑥𝑛=1+𝑥+12𝑥2+16𝑥3+…log(1+𝑥)=∑𝑛=1∞(−1)𝑛−1𝑛𝑥𝑛=𝑥−12𝑥2+13𝑥3−…(|𝑥|<1).sin𝑥=∑𝑘=0∞(−1)𝑘(2𝑘+1)!𝑥2𝑘+1=𝑥−16𝑥3+1120𝑥5−…cos𝑥=∑𝑘=0∞(−1)𝑘(2𝑘)!𝑥2𝑘=1−12𝑥2+124𝑥4−…sinh𝑥=∑𝑘=0∞1(2𝑘+1)!𝑥2𝑘+1=𝑥+16𝑥3+1120𝑥5+…cosh𝑥=∑𝑘=0∞1(2𝑘)!𝑥2𝑘=1+12𝑥2+124𝑥4+…

一般にテーラーの定理の剰余項が0に収束することを示すのは大変なので、既知のべき級数の項別微分、項別積分を利用して様々なテーラー展開を求めるとよい。

注意 3

式 (0.2) は等比級数からも導出することができる。 さらにそれを項別積分すると、

∫0𝑥11−𝑥d𝑥=−log(1−𝑥)=∑𝑛=1∞1𝑛𝑥𝑛=𝑥+12𝑥2+13𝑥3+…(|𝑥|<1).

よって、log(1+𝑥)の式式 (0.4) を得ることができる。

例 4

関数𝑒𝑥2のテーラー展開は式 (0.3) の𝑥に𝑥2を代入することで

𝑒𝑥2=∑𝑛=0∞1𝑛!𝑥2𝑛=1+𝑥2+12𝑥4+16𝑥6+…

と求めることができる。 なお、このべき級数の収束半径は∞である。

チェザロ平均とチェザロ和

チェザロ平均とは前巻でも取り上げた、数列に対して平均を取って得られる新しい数列のことである。

定義 1 (チェザロ平均)

数列(𝑎𝑛)𝑛=1∞と𝑁=1,2,3,…に対して

1𝑁∑𝑛=1𝑁𝑎𝑛=𝑎1+𝑎2+…+𝑎𝑁𝑁

を(𝑎𝑛)の第𝑁項までのチェザロ平均という。 チェザロ平均からなる数列(1𝑁∑𝑛=1𝑁𝑎𝑛)𝑁=1∞を(𝑎𝑛)のチェザロ平均列という。

チェザロ平均の重要な性質として、数列(𝑎𝑛)が収束するならばそのチェザロ平均列も収束し、その極限は(𝑎𝑛)の極限と一致するということがある。 このことにより収束しない数列でもチェザロ平均列で収束や極限を代用することがある。 その最たる例がチェザロ和であり、収束するとは限らない級数の部分和にチェザロ平均を適用することで級数の和に意味を見出す。

定義 2 (チェザロ和)

級数∑𝑛=1∞𝑎𝑛の部分和𝐴𝑁=∑𝑛=1𝑁𝑎𝑛のチェザロ平均

1𝑁∑𝑛=1𝑁𝐴𝑛=𝐴1+𝐴2+…+𝐴𝑁𝑁

が𝑁→∞である値𝐴に収束するとき、 級数∑𝑛=1∞𝑎𝑛はチェザロ総和可能といい、𝐴をチェザロ和という。

元の級数∑𝑛=1∞𝑎𝑛が収束するならば、チェザロ総和可能であり、チェザロ和は元の級数の和と一致する。