級数
級数の収束
数列の項の和について考える。 このような和のことを級数と呼び、形式的には
と表すが、無限個の項の和なのでしっかり定義する必要がある。
定義 1 (級数)
を整数として数列を考える。 整数に対して、初項から項までの部分和
を定義する。 部分和を並べて得られる数列がある数に収束する時、 級数は収束するといい、この時の極限を数列の級数の値または和と呼びで表す。 また、部分和の数列が発散するとき、級数は発散するという。 級数の表記は
などがある。
例 2 (等比級数)
を実数として等比数列を考える。 対応する級数
を等比級数という。 の時、部分和は
であり、のとき収束し級数の値は
である。 それ以外のの場合は発散する。 の場合もより発散する。
次の命題は級数が収束する必要条件を与える。
命題 3
数列に対して、級数が収束するならば数列はに収束する。証明
各に対して、
が成り立つ。 級数が収束するため、とはともに和に収束することから、 数列ひいてははに収束する。
注意 4
この命題の逆は成立しない。 例えばに対してとおいた級数
は収束しない。 実際、
で、 続けると
がわかり、これは収束しない。
級数(数列)の中でも特別なのが次の正項級数である。
定義 5 (正項級数)
数列が各に対してを満たすとき、級数を正項級数という。命題 6
正項級数が収束するための必要十分条件は部分和の数列が上に有界であることである。証明
が正項級数であることから、各に対して
より、数列は単調増加である。 したがってが上に有界ならば、単調収束定理より、収束する。 逆は収束する実数列は有界であることから従う。
このため正項級数の場合に限って級数が収束することを
と表し、発散することを
と表す。
定義 7 (級数の絶対収束と条件収束)
級数に対して正項級数が収束するとき、級数は絶対収束するという。 絶対収束しないが収束するとき、級数は条件収束するという。命題 8
級数が絶対収束するならばそれは収束している。証明
の初項からまでの部分和をと、の初項からまでの部分和をとおく。 ここで各に対して、ならば
で、ならば
なので、常に
が成り立つ。 よってについて上極限をについて下極限をそれぞれ取ると、とは仮定より収束することに注意して、
したがって上極限と下極限が一致したのでさらには級数は収束する。
ここまでくると級数の理論は広義積分の理論と似ていることに気が付く。 つまり、級数の収束は部分和の極限で定義していることは広義積分の積分区間を有界閉区間で近似していたことに対応するし、 級数でも広義積分でも絶対収束が登場する。 実際、次の命題は級数版の比較判定法である。
命題 9 (級数の比較判定法)
を数列とする。
二つの条件
を満たす正項級数が存在するならば、 級数は絶対収束し、
が成り立つ。
二つの条件
を満たす正項級数が存在するならば、 級数は絶対収束せず、
である。
級数を等比級数と比較することで収束性をある程度判定することができる。
定理 10 (ダランベールの判定法)
をどの項もでない数列とする。 極限
が存在し、ならば級数は絶対収束し、ならば級数は発散する。
定理 11 (コーシーの判定法)
を数列とする。 上極限
について、ならば級数は絶対収束し、ならば級数は発散する。
例 12
級数
は(絶対)収束する。 実際、とおくと、で
より、ダランベールの判定法が使えて、収束する。
どちらの判定法もの場合は級数が収束するか発散するかわからない。
例 13
級数
ではダランベールの判定法とコーシーの判定法はともにとなってしまい、級数が収束するか発散するか判定できない。 実際にはすぐ次でわかる通り収束する。
このような級数に対しては次の定理で広義積分の判定に帰着させるとよい。
定理 14 (級数と広義積分の比較)
を整数として、を上定義された単調減少する非負値の関数とする。 このとき(正項)級数
が収束することと広義積分
が収束することは同値である。
証明
整数に対して、単調減少での和と積分の関係(<t_sum_int_monotone>)より
であり、は非負値であることから
が成り立つ。 よって、ならであり、 ならがわかる。
例えば次のことがわかる。
命題 15
を実数とするとき、
が成り立つ。
交代級数と条件収束
各項の符号が常に正(正確には非負)なのが正項級数であったが、項の符号が順番に入れ替わっていく級数を考える。
定義 1 (交代級数)
実数列が各に対して
を満たすとき、級数を交代級数という。 つまり交代級数は正項級数を使って、またはと表すことができる。
絶対収束しない場合でも交代級数であれば収束することがある。 次の定理はある種の交代級数の収束性を保証する。
定理 2 (ライプニッツの判定法)
実数列が単調減少しでに収束するとする(特にである)。 このとき、交代級数は収束し、各に対して
を満たす。
証明
に対して部分和をとおく。 このとき、に対して
より
がわかる。 したがって単調収束定理よりとは収束し極限をそれぞれととおくとである。 また、ここで
よりである。 とおく。 あとはを示す。
の場合、
である。
の場合、
である。
以上より示すべき不等式が示されて、直ちにつまり交代級数が収束することが示される。
交代級数に対するこの収束の判定法を一般化して次の収束の条件が知られている。
定理 4 (ディリクレの判定法)
を整数として、実数列は単調減少しでに収束するとする。 数列は部分和の数列が有界、つまりある実数が存在し任意のに対してが成り立つとする。 このとき級数は収束する。証明
まず、部分和をとおく。 ここで、部分和分より便宜的にとおくことで、
ここでとすることを考えると、が有界でよりである。 また、仮定を使うと、
で
なので比較判定法からは(絶対)収束し、 の収束も示された。
例 5
交代級数の例 3 の類似として級数
を考える。 , とするとディリクレの判定法の仮定を満たすので、条件収束することがわかる。
一般に和は計算できる(後の章を参照)ことから、級数
などはやはり条件収束することがわかる。
べき級数
定義 1 (べき級数)
数列と数とに対して定まる次の形の級数
をべき級数または整級数という。
べき級数は単一ののみ考えるなら特殊な形の級数であるが、重要な点はを変数、べき級数を関数と見て議論を展開する点にある。
注意 2
べき級数はのときに必ず収束する。命題 3 (べき級数の収束性)
べき級数が数 ()で収束するならば、を満たすすべての数でこのべき級数は絶対収束する。証明
級数が収束するので、命題 3 より数列はに収束し、特に有界である。 そこである実数が存在し、任意のに対してである。 ここで
であり、であることから右辺から定まる正項級数は収束するので、 級数は絶対収束する。
この命題をもとに各べき級数には固有な次の値が定義できる。
定義 4 (収束半径)
べき級数に対して、 級数として収束するような数を考えの上限をべき級数の収束半径という。 収束半径は非負の実数または正の無限大である。注意 5
を収束半径とするとき、に対してはべき級数は必ず発散し、に対しては先の命題よりべき級数は必ず絶対収束する。 の場合では任意のでべき級数は絶対収束する。注意 6
収束半径という用語に「半径」という単語が入っているのはべき級数の理論をやが複素数の場合に拡張したときに絶対収束が確実に言えるの範囲が複素平面での円板になっていることによる。 実際、この章の内容は複素数の範囲に拡張でき、後の複素指数関数の部分で使われる。級数の収束に関するダランベールの判定法やコーシーの判定法から収束半径について次の公式が知られている。
定理 7
べき級数を考える。
さらにはどの項もでない数列として、極限
が存在したとするとき、べき級数の収束半径は逆数となる。
上極限
について、べき級数の収束半径は逆数となる。
例 8
数に対してべき級数
を考える。
より、 このべき級数の収束半径はである。
例 9
数に対してべき級数
を考える。
より、 このべき級数の収束半径はである。
ここからはいよいよ関数としてのべき級数を考えよう。 まず、べき級数の収束半径をとするとき、関数
がを満たす数に対して定義されることに注意する。 また、に対して部分和を
とおく。 この部分和は次以下の多項式である。
定理 10 (べき級数の連続性)
収束半径がであるべき級数はで連続である。証明
まずは, を満たす数, と自然数に対して、
に注意する。 ここで、に対して、級数は収束するので、のとき
で右辺はでに収束する。 ここでは多項式関数より特に有界閉区間で一様連続なので、度合い関数を使ってである。 よって
なので、 はで一様連続であり、で連続であることがわかる。
定理 11 (べき級数の項別積分)
収束半径がであるべき級数に対して
が任意のを満たす数に対して成り立つ。
証明
前の定理よりべき級数は上連続より積分可能であることに注意する。 自然数に対して、
よってで最右辺はに収束することからであり、
であることから定理の結論が得られる。
定理 12 (べき級数の項別微分)
収束半径がであるべき級数は微分可能で
が任意のを満たす実数に対して成り立つ。
証明
まず、べき級数の収束半径がであることに注意する。 そこで前の定理よりを項別積分すると
よって、はの不定積分と定数差なので、を微分するとを得る。
注意 13
べき級数を微分して収束半径が変わらないべき級数になるので、微分することを何回も繰り返すことができ、べき級数は無限回微分可能であることわかる。種々のべき級数
この節ではこれまでに登場した関数とべき級数を結びつける。 自明なこととして多項式関数はそのままべき級数と見ることができる。
一般の(滑らかな)関数とべき級数を結びつけるのが次の定理でテイラーの定理から直ちに従う。
定理 1
を正の実数または正の無限大として、数に対してをで無限回微分可能な関数とする。 ここで、なる数に対して
が成り立つならば、
が成り立つ。
このときの式 (0.1) のことを関数の点でのテーラー展開という。 また、のときのテーラー展開のことをマクローリン展開という。
次の一覧は各種関数のテーラー展開(マクローリン展開)をまとめたものである。
命題 2 (種々の関数のテーラー展開)
を実数として以下が成立する。
一般にテーラーの定理の剰余項がに収束することを示すのは大変なので、既知のべき級数の項別微分、項別積分を利用して様々なテーラー展開を求めるとよい。
チェザロ平均とチェザロ和
チェザロ平均とは前巻でも取り上げた、数列に対して平均を取って得られる新しい数列のことである。
定義 1 (チェザロ平均)
数列とに対して
をの第項までのチェザロ平均という。 チェザロ平均からなる数列をのチェザロ平均列という。
チェザロ平均の重要な性質として、数列が収束するならばそのチェザロ平均列も収束し、その極限はの極限と一致するということがある。 このことにより収束しない数列でもチェザロ平均列で収束や極限を代用することがある。 その最たる例がチェザロ和であり、収束するとは限らない級数の部分和にチェザロ平均を適用することで級数の和に意味を見出す。
定義 2 (チェザロ和)
級数の部分和のチェザロ平均
がである値に収束するとき、 級数はチェザロ総和可能といい、をチェザロ和という。
元の級数が収束するならば、チェザロ総和可能であり、チェザロ和は元の級数の和と一致する。