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三角化

フロベニウスの定理とケイリー・ハミルトンの定理

定理 1 (フロベニウスの定理)

𝐴を𝐾上の𝑁次正方行列、𝑓(𝑥)を𝐾上の多項式とする。 このとき、𝐴の固有値𝑐∈𝐾に対して、𝑓(𝑐)は𝑓(𝐴)の固有値である。 より詳しくは𝐴の固有多項式が𝑐1,…,𝑐𝑁∈𝐾を使って<e_eigenfactor> と因数分解されるならば、 𝑓(𝐴)の固有多項式は

det(𝑥𝐼−𝑓(𝐴))=(𝑥−𝑓(𝑐1))…(𝑥−𝑓(𝑐𝑁))

と因数分解される。

証明

𝑐を𝐴の固有値とするとき、𝐴𝒗=𝑐𝒗となるベクトル𝒗≠𝟎が取れる。 𝑛=0,1,2,3,…に対して、

𝐴𝑛𝒗=𝑐𝑛𝒗

であるからスカラー倍して和を取ることで、

𝑓(𝐴)𝒗=𝑓(𝑐)𝒗

である。 よって、𝑓(𝑐)は𝑓(𝐴)の固有値である。

𝐴の固有多項式が<e_eigenfactor> と因数分解されるとき、<t_tri> より<e_tri> と三角化される。 𝑛=0,1,2,3,…に対して、

𝐴𝑛=𝑃(𝑐1⋯∗⋱⋮𝑐𝑁)𝑛𝑃−1=𝑃(𝑐1𝑛⋯∗⋱⋮𝑐𝑁𝑛)𝑃−1

であるからスカラー倍して和を取ることで、

𝑓(𝐴)=𝑃(𝑓(𝑐1)⋯∗⋱⋮𝑓(𝑐𝑁))𝑃−1

である。 よって、<t_eigenfactor> より、この定理の結論が従う。

定理 2 (ケイリー・ハミルトンの定理)

𝐴を𝐾上の𝑁次正方行列として、固有多項式𝑓𝐴(𝑥)=det(𝑥𝐼−𝐴)が<e_eigenfactor> と因数分解されたとする。 このとき、𝑓𝐴(𝐴)=𝑂が成り立つ。

注意 3

この定理はdet(𝑥𝐼−𝐴)の𝑥に𝐴を代入できると拡大解釈すればdet(𝐴𝐼−𝐴)=det𝑂=0となり正しそうであるが、 実際の証明はしっかり𝑓𝐴(𝐴)の定義に則って行う必要がある。

証明

まず𝐴が右上三角行列

𝑇=(𝑐1⋯∗⋱⋮𝑐𝑁)

の場合に示す。 このとき固有多項式は

𝑓𝑇(𝑥)=(𝑥−𝑐1)…(𝑥−𝑐𝑁)

であり、

𝑓𝑇(𝑇)=(𝑇−𝑐1𝐼𝑁)…(𝑇−𝑐𝑁𝐼𝑁)

が成り立つ。 あとはこれが零行列であることを𝑁についての数学的帰納法で示す。 𝑁=1の時は𝑇=(𝑐1)なので𝑇−𝑐1𝐼1=𝑂1である。 𝑁−1で成立する時、

(𝑇−𝑐1𝐼𝑁)…(𝑇−𝑐𝑁−1𝐼𝑁)=(𝑂𝑁−1∗𝟎𝑁−1∗),(𝑇−𝑐𝑁𝐼𝑁)=(∗∗𝟎𝑁−10)

なので、積を取ると零行列になる。 以上より𝑓𝑇(𝑇)=𝑂である。 一般の𝐴に対しては<t_tri> より、𝐴は<e_tri> と三角化されて右上三角行列を𝑇とおくと、 𝑓𝐴(𝑥)=𝑓𝑇(𝑥)=(𝑥−𝑐1)…(𝑥−𝑐𝑁)で

𝑓𝐴(𝐴)=𝑃𝑓𝐴(𝑇)𝑃−1

より、𝑓𝐴(𝐴)=𝑂がわかる。

以上の二つの定理を使えば例えば以下のことがわかる。

命題 4 (べき零行列)

代数的閉体𝐾上の𝑁次正方行列𝐴がある𝑛=1,2,3,…で

𝐴𝑛=𝑂

を満たす時、𝐴𝑁=𝑂が成り立つ。

このような行列のことをべき零行列という。

証明

𝑓(𝑥)=𝑥𝑛とおいてフロベニウスの定理を用いると、𝐴の固有値を𝑐∈𝐾とおくと𝑓(𝑐)=𝑐𝑛は𝑓(𝐴)=𝐴𝑛の固有値である。 ここで𝐴𝑛=𝑂の固有値は0しかないので、𝑐𝑛=0がわかり𝐴の固有値は全て0であることがわかる。 よって、𝐴の固有多項式は𝑓𝐴(𝑥)=𝑥𝑁であり、ケイリー・ハミルトンの定理より𝑓𝐴(𝐴)=𝐴𝑁=𝑂が従う。

べき零行列の重要な例は三角行列であって対角成分もすべて零であるような行列である。

命題 5 (べき零行列の例)

𝑇を𝐾上の𝑁次正方行列であって対角成分がすべて零であるような右上三角行列とする。 つまり

𝑇=(0⋯∗⋱⋮0)

とするとき、𝑇𝑁=𝑂が成り立つ。

証明

𝑇の固有多項式を計算すると𝑓𝑇(𝑥)=𝑥𝑁であるから、ケイリー・ハミルトンの定理より𝑓𝑇(𝑇)=𝑇𝑁=𝑂が従う。

なお、実はべき零行列は三角化したら対角成分がすべて零になるような行列である。

広義固有空間

固有多項式の零点の重複度(代数的重複度)と固有空間の次数(幾何学的重複度)には差がある可能性があるのであった。 その差を埋めるにはどうすればいいだろうか。 そのためのアイデアが固有空間を拡張した広義固有空間である。

定義 1 (広義固有空間)

𝐴を𝐾上の𝑁次正方行列として、𝑥∈𝐾と𝑛=0,1,2,3,…に対して

𝑊𝑛(𝑥)=Ker(𝑥𝐼−𝐴)𝑛={𝒗∈𝐾𝑁|(𝑥𝐼−𝐴)𝑛𝒗=𝟎}

と定める。 固有値𝑥=𝑐に対して𝑊𝑛(𝑐)をまとめて𝐴の固有値𝑐に対する広義固有空間という。

𝑊𝑛(𝑥)は𝑛が大きくなるにつれて大きくなる𝐾𝑁の部分空間であり、

𝑊0(𝑥)=𝑂𝐾𝑁⊂𝑊1(𝑥)=𝑊(𝑥)⊂𝑊2(𝑥)⊂𝑊3(𝑥)⊂…⊂𝐾𝑁

が成り立つ。

定理 2 (広義固有空間分解)

𝐴を𝐾上の𝑁次元正方行列として、𝑐1,…,𝑐𝐿∈𝐾を相異なる固有値とし、𝐴の固有多項式が

det(𝑥𝐼−𝐴)=(𝑥−𝑐1)𝑛1…(𝑥−𝑐𝐿)𝑛𝐿,𝑛1+…+𝑛𝐿=𝑁

と因数分解されるとする。 このとき各𝑖=1,…,𝐿に対してdim𝑊𝑛𝑖(𝑐𝑖)=𝑛𝑖であり、

𝑊𝑛1(𝑐1)⊕…⊕𝑊𝑛𝐿(𝑐𝐿)=𝐾𝑁

が成り立つ。

証明

固有値𝑐=𝑐𝑖に対して代数的重複度を𝑛=𝑛𝑖とおく。 ここで<t_tri> より、必要ならば行の入れ替えを行うことで𝐴は対角成分がすべて𝑐の𝑛次三角行列𝑆と対角成分がどれも𝑐でない𝑁−𝑛次三角行列𝑇を使って

𝐴=𝑃(𝑆∗𝑂𝑇)𝑃−1

と三角化される。 このとき𝑐𝐼−𝑆は対角成分がすべて0の𝑛次三角行列であるから、

𝑐𝐼−𝐴=𝑃(𝑐𝐼−𝑆∗𝑂𝑐𝐼−𝑇)𝑃−1,(𝑐𝐼−𝐴)𝑛=𝑃((𝑐𝐼−𝑆)𝑛∗𝑂(𝑐𝐼−𝑇)𝑛)𝑃−1=𝑃(𝑂∗𝑂(𝑐𝐼−𝑇)𝑛)𝑃−1

となる。 一方で𝑐𝐼−𝑇は可逆であるから(𝑐𝐼−𝑇)𝑛も可逆であり、

𝑊𝑛(𝑐)=Ker(𝑐𝐼−𝐴)𝑛={𝑃(𝒗𝟎)|𝒗∈𝐾𝑛}

なのでdim𝑊𝑛(𝑐)=𝑛がわかる。

ジョルダン標準形