三角化
フロベニウスの定理とケイリー・ハミルトンの定理
定理 1 (フロベニウスの定理)
を上の次正方行列、を上の多項式とする。 このとき、の固有値に対して、はの固有値である。 より詳しくはの固有多項式がを使って<e_eigenfactor> と因数分解されるならば、 の固有多項式は
と因数分解される。
証明
をの固有値とするとき、となるベクトルが取れる。 に対して、
であるからスカラー倍して和を取ることで、
である。 よって、はの固有値である。
の固有多項式が<e_eigenfactor> と因数分解されるとき、<t_tri> より<e_tri> と三角化される。 に対して、
であるからスカラー倍して和を取ることで、
である。 よって、<t_eigenfactor> より、この定理の結論が従う。
定理 2 (ケイリー・ハミルトンの定理)
を上の次正方行列として、固有多項式が<e_eigenfactor> と因数分解されたとする。 このとき、が成り立つ。注意 3
この定理はのにを代入できると拡大解釈すればとなり正しそうであるが、 実際の証明はしっかりの定義に則って行う必要がある。証明
まずが右上三角行列
の場合に示す。 このとき固有多項式は
であり、
が成り立つ。 あとはこれが零行列であることをについての数学的帰納法で示す。 の時はなのでである。 で成立する時、
なので、積を取ると零行列になる。 以上よりである。 一般のに対しては<t_tri> より、は<e_tri> と三角化されて右上三角行列をとおくと、 で
より、がわかる。
以上の二つの定理を使えば例えば以下のことがわかる。
命題 4 (べき零行列)
代数的閉体上の次正方行列があるで
を満たす時、が成り立つ。
このような行列のことをべき零行列という。
証明
とおいてフロベニウスの定理を用いると、の固有値をとおくとはの固有値である。 ここでの固有値はしかないので、がわかりの固有値は全てであることがわかる。 よって、の固有多項式はであり、ケイリー・ハミルトンの定理よりが従う。べき零行列の重要な例は三角行列であって対角成分もすべて零であるような行列である。
命題 5 (べき零行列の例)
を上の次正方行列であって対角成分がすべて零であるような右上三角行列とする。 つまり
とするとき、が成り立つ。
証明
の固有多項式を計算するとであるから、ケイリー・ハミルトンの定理よりが従う。なお、実はべき零行列は三角化したら対角成分がすべて零になるような行列である。
広義固有空間
固有多項式の零点の重複度(代数的重複度)と固有空間の次数(幾何学的重複度)には差がある可能性があるのであった。 その差を埋めるにはどうすればいいだろうか。 そのためのアイデアが固有空間を拡張した広義固有空間である。
定義 1 (広義固有空間)
を上の次正方行列として、とに対して
と定める。 固有値に対してをまとめての固有値に対する広義固有空間という。
はが大きくなるにつれて大きくなるの部分空間であり、
が成り立つ。
定理 2 (広義固有空間分解)
を上の次元正方行列として、を相異なる固有値とし、の固有多項式が
と因数分解されるとする。 このとき各に対してであり、
が成り立つ。
証明
固有値に対して代数的重複度をとおく。 ここで<t_tri> より、必要ならば行の入れ替えを行うことでは対角成分がすべての次三角行列と対角成分がどれもでない次三角行列を使って
と三角化される。 このときは対角成分がすべての次三角行列であるから、
となる。 一方では可逆であるからも可逆であり、
なのでがわかる。