種々の関数
多項式関数
実数と自然数に累乗を対応させる関数を累乗関数あるいは自然数べき関数という。 <t_ex_conti> と<t_conti_arith> から、累乗関数は上の連続関数である。
を個の実数定数として得られる多項式関数
は上の連続関数である。 もしならば上の多項式関数の次数はとし、は特別に次数はとする。
多項式関数のでの極限では最高次の項が支配的になる。
命題 1 (多項式関数の無限大での極限)
を次の多項式関数で、とする。
- の時、であり、が偶数ならば、が奇数ならばである。
- の時、であり、が偶数ならば、が奇数ならばである。
注意 2
が奇数の時はとで符号が異なるので、中間値の定理からの実数解が少なくともつ存在することがわかる。 が偶数の時は実数解が存在しない場合がある。べき関数
でない実数と整数に対して整数べきを対応させる関数を整数べき関数という。 整数べき関数は常に上の連続関数である。 もちろんが自然数の時は累乗関数なので上の連続関数でもある。
以降では指数を有理数や実数に拡張する。 そのためにまず、正の整数に対して指数が分数の場合を考える。 それを累乗関数の逆関数として定義したい。 を満たす拡大実数に対してより関数は狭義単調増加な連続関数で, が成り立つ。 したがって逆関数の定理から非負の実数に対して定義されたの逆関数が存在し、も狭義単調増加な連続関数で, が成り立つ。 この逆関数を累乗根関数といいと表す。 累乗根関数は上の連続関数であり、と考えることで上の連続関数としても扱える。 また、その値を非負の拡大実数の乗根といい、そのような数を累乗根という。 乗根はについての方程式の一意な非負実数解である。
の時はに他ならない。 の時を特別に平方根関数、平方根といい、, と書く。
整数げきと累乗根により、指数が有理数 (, )の場合の分数べきあるいは有理数べきを正の数に対して
として定義できる。 この値は有理数の表現によらないことに注意する。
指数が実数の場合を考えるにあたって、有理数に対して定義された関数はのとき狭義単調増加で、のとき狭義単調減少で、のとき定数関数であることに注意する。 そこで実数に対してべきあるいは実数べきを正の実数に対して
と定義する。
一般のべきに対する指数法則は次のように表現される。
命題 1 (指数法則)
- 任意の正の実数と実数に対してが成り立つ。
- 任意の正の実数と実数に対してが成り立つ。
- 任意の正の実数と実数に対してが成り立つ。
以上によって一般の指数に対するべきが定義された。 指数を固定した状態で底を変数とする関数はべき関数と呼ばれる。 べき関数は上の連続関数である。 のときは, と、のときは, と、のときは, とそれぞれ考えると、べき関数は上の連続関数である。
指数関数
べき関数が指数を固定して底についての関数であるのに対して、 底を固定して指数についての関数を指数関数という。 つまり、正の実数に対して、関数をを底とする指数関数という。
指数関数は上の連続関数であり、常にが満たされる。 拡大実数に拡張すると、 のとき, と、のとき, と、のときと考えることで、指数関数は上の連続関数である。 また、のときは狭義単調増加で、のときは狭義単調減少で、のときは定数関数である。
今後の理論の展開において重要な極限として次がある。
定理 1
実数列は有限値に収束する。この時の極限をとおきネイピア数という。
である。 ネイピア数は指数関数・対数関数の微分積分において重要な役割を果たす定数である。
証明
二項定理より
である。 ここでに対してより、
つまり実数列は単調増加である。 また、
つまり上に有界も示された。 よって、単調収束定理(<t_mono_conv>)より数列は収束する。
注意 2
この証明とのときを考えると、がわかり、だいたいの値として覚えるとよい。 また、もわかるが、実は等号が成り立つ。 このことについては微分の章のテイラーの定理や級数の章のべき級数を参照すること。注意 3
証明のうち単調性の部分は、任意の非負の実数に対して
に容易に拡張できる。
命題 4
ネイピア数について極限の式
が成り立つ。
証明
まずを満たす実数に対して
を示す。 関数は連続関数なので、が有理数の場合に成り立つことを示せば十分である。 そこで、有理数を通分してを用いて, と表すと、を満たす整数が得られる。 このとき、として式 (0.1) を用いることで、より乗根を取ることで式 (0.2) が得られる。 ここで、以上の実数に対して、とおくとより
が成り立つ。 よって、でとなり、ネイピア数の定義より最左辺と最右辺がともにに収束することからである。 次に
なので、やはりであり、 をに置き換えることで、が得られる。 さらにをで置き換えることで、
がわかり、右極限と左極限が一致しているのでである。
を有限の実数としたとき、でより
が成り立つ。
ネイピア数を底とする指数関数を単にで表す。
対数関数
を, を満たす実数とする。 この時、前節の内容から指数関数に逆関数が存在しを底とする対数関数といいで表す。 正の実数に対して対数関数の値をを底とする真数の対数という。
対数関数は上の連続関数であり、拡大実数の範囲では上の連続関数である。 のときは狭義単調増加で, が成立し、 のときは狭義単調減少で, が成立する。 任意のに対してで、 任意のに対してが成り立つ。
指数法則に対応して、次の対数法則が成り立つ。
命題 1 (対数法則)
- 任意の正の実数に対してが成り立つ。
- 任意の正の実数と実数に対してが成り立つ。
ネイピア数を底とする対数を自然対数といい、関数を単にで表す。
命題 2
極限の式
が成り立つ。
三角関数
直角三角形の辺の長さの比から定まる三角比をもとにした正弦関数、余弦関数、正接関数は次を満たす関数であり、まとめて三角関数という。
とはともに上の実数値連続関数であり、任意の実数に対して
が成り立つ。
として、とはともに周期を持つ、 つまり任意の実数に対して
が成り立つ。
, , , , で、 実数に対して
が成り立つ。
- はで狭義単調増加で、はで狭義単調減少である。
加法定理、つまり任意の実数, に対して、
が成り立つ。
極限の式
が成り立つ。
- であり、に対して定義される。 は, とすると、上の狭義単調増加な連続関数である。
ただし、途中に出てくる定数を円周率という。 などはしばしばと記述される。
このテキストではこれらの三角関数は存在するものとして話を進める。 三角関数の定義つまりこれらの性質を満たす関数の構成は、指数関数の複素数への拡張による方法やべき級数による方法、微分方程式の解として特徴づける方法などがあるが、現段階の知識ではうまく定義できない。 ただし最初の方法についてあらましを述べると、指数関数を複素数に拡張してを構成するとオイラーの関係式によって三角関数とを得る。 複素数に拡張しても複素数, に対して指数法則と極限 ()が成り立つので、三角関数の加法定理と極限の式が導かれる。 加法定理より指数法則の方が単純で覚えやすいので、加法定理を忘れたとしても指数法則とオイラーの関係式から導くことができる。
逆三角関数
正弦関数は上で狭義単調増加な連続関数で, より、の逆関数として逆正弦関数が上の値の狭義単調増加な連続関数として得られる。 余弦関数は上で狭義単調減少な連続関数で, より、の逆関数として逆余弦関数が上の値の狭義単調減少な連続関数として得られる。 正接関数は上で狭義単調増加な連続関数で, より、の逆関数として逆正接関数が上の値の狭義単調増加な連続関数として得られる。 これらの関数をまとめて逆三角関数という。
例 1
逆三角関数は三角比を角度に変換し、三角関数と合成させることで三角比や角度を別の三角比や角度に変換できる。 例えば、に対して、より、
である。
双曲線関数
実数に対して次で定まる上の関数として双曲線正弦関数、双曲線余弦関数、双曲線正接関数を導入する。
これらの関数をまとめて双曲線関数という。
この定義からすぐに以下の性質がわかる。
とはともに上の連続関数であり、任意のに対して
が成り立つ。
- はで狭義単調増加で、はで狭義単調減少、で狭義単調増加である。
, , , で、 拡大実数に対して
が成り立つ。
加法定理、つまり任意の実数に対して、
が成り立つ。
極限の式
が成り立つ。
- は上の連続関数である。
最初の等式は平面上の点が双曲線上の点であることを表しそこから双曲線関数と呼ばれる。 などはしばしばと記述される。
逆双曲線関数
双曲線正弦関数は上で狭義単調増加な連続関数で, より、の逆関数として逆双曲線正弦関数が上の値の狭義単調増加な連続関数として得られる。 双曲線余弦関数は上で狭義単調増加な連続関数で, より、の逆関数として逆双曲線余弦関数が上の値の狭義単調増加な連続関数として得られる。 双曲線正接関数は上で狭義単調増加な連続関数で, より、の逆関数として逆双曲線正接関数が上の値の狭義単調増加な連続関数として得られる。 これらの関数をまとめて逆双曲線関数という。
上では逆双曲線関数を抽象的に定義したが、双曲線関数の表示にもとづいてをについて解くことで、実数に対して次の表示が得られる。
その他の関数
拡大実数に対して絶対値を対応させる関数を絶対値関数といいやと表す。 絶対値関数はとして上の連続関数である。
拡大実数に対して次の符号を対応させる関数を符号関数といいと表す。
符号関数はで連続関数であるがで連続でない。
実数に対して床を対応させる関数を床関数といいやと表す。 実数に対して天井を対応させる関数を天井関数といいやと表す。 床関数と天井関数はで連続関数であるが整数の点で連続でない。 しかしながら、右連続・左連続を考えると、床関数は整数の点でも右連続で、天井関数は整数の点でも左連続である。