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種々の計算

正測体と正軸体の体積

正測体とは線分、正方形、立方体といったものを次元について一般化したもので、 原点を中心とした半径𝑎>0の𝑁次元正測体を

𝐶𝑁(𝑎)={(𝑥1,…,𝑥𝑁)∈ℝ𝑁|max{|𝑥1|,…,|𝑥𝑁|}≤𝑎}

として定義される。 これは𝐶𝑁(𝑎)=[−𝑎,+𝑎]𝑁とも表記されるため、一辺の長さが2𝑎とも言えるが、次に述べる正軸体との兼ね合いで半径𝑎という用語を使って表現する。 この𝑁次元正測体の体積は𝑁次元立方体の体積なので、

vol(𝐶𝑁(𝑎))=(2𝑎)𝑁=2𝑁𝑎𝑁

である。

正軸体は線分、正方形、正八面体の一般化で、 原点を中心とした半径𝑎>0の𝑁次元正軸体を

𝐷𝑁(𝑎)={(𝑥1,…,𝑥𝑁)∈ℝ𝑁||𝑥1|+…+|𝑥𝑁|≤𝑎}

として定義される。 この正軸体の体積はカヴァリエリの原理より次数についての帰納法で求めることができる。 つまり、𝐷𝑁+1(𝑎)において𝑥𝑁+1=𝑦を固定した時の切り口は𝐷𝑁(𝑎−|𝑦|)より

vol(𝐷𝑁+1(𝑎))=∫−𝑎+𝑎area(𝐷𝑁(𝑎−|𝑦|))d𝑦=2∫01area(𝐷𝑁((1−𝑡)𝑎))𝑎d𝑡.

ここでvol(𝐷𝑁(𝑎))=𝑐𝑁𝑎𝑁とできると考えられ、

vol(𝐷𝑁+1(𝑎))=2∫01𝑐𝑁(1−𝑡)𝑁𝑎𝑁+1d𝑡=2𝑁+1𝑐𝑁𝑎𝑁+1.

よって、

𝑐𝑁+1=2𝑁+1𝑐𝑁,𝑐1=2

なので、𝑐𝑁=2𝑁𝑁!であり、

vol(𝐷𝑁(𝑎))=2𝑁𝑁!𝑎𝑁

を得る。

球の体積

原点を中心とした半径𝑎>0の𝑁次元球

𝐵𝑁(𝑎)={(𝑥1,…,𝑥𝑁)∈ℝ𝑁|𝑥12+…+𝑥𝑁2≤𝑎2}

の体積を考える。 正軸体の体積同様、カヴァリエリの原理より

vol(𝐵𝑁+1(𝑎))=∫−𝑎+𝑎area(𝐵𝑁(𝑎2−𝑦2))d𝑦=2∫01area(𝐵𝑁(1−𝑡2𝑎))𝑎d𝑡

で𝐵1(𝑎)=2𝑎に注意して、vol(𝐵𝑁(𝑎))=𝑐𝑁𝑎𝑁とできることがわかる。 このとき𝑐𝑁を求めることは積分

∫01(1−𝑡2)𝑁2d𝑡

の計算に帰着される。

この計算はできないことはないが面倒なのでここでは別のアプローチを取る。 つまりカヴァリエリの原理を適用するときに2変数分使って𝐷(𝑎)={(𝑥,𝑦)∈ℝ2|𝑥2+𝑦2≤𝑎2}として

vol(𝐵𝑁+2(𝑎))=𝑐𝑁+2𝑎𝑁+2=∬𝐷(𝑎)area(𝐵𝑁(𝑎2−𝑥2−𝑦2))d(𝑥,𝑦)=∬𝐷(𝑎)𝑐𝑁𝑎2−𝑥2−𝑦2𝑁d(𝑥,𝑦)

となり、極座標変換𝑥=𝑎𝑟cos𝜃,𝑦=𝑎𝑟sin𝜃により

𝑐𝑁+2𝑎𝑁+2=𝑐𝑁𝑎𝑁+2∫01∫02𝜋1−𝑟2𝑁𝑟d𝜃d𝑟=2𝜋𝑐𝑁𝑎𝑁+2∫011−𝑟2𝑁𝑟d𝑟=2𝜋𝑁+2𝑐𝑁𝑎𝑁+2.

つまり、

𝑐𝑁+2=2𝜋𝑁+2𝑐𝑁,𝑐1=2,𝑐2=𝜋

より𝑐𝑁を𝑁の偶奇に分けて計算すると

vol(𝐵𝑁(𝑎))={2𝑀𝜋𝑀−1(2𝑀−1)(2𝑀−3)…3⋅1𝑎2𝑀−1(𝑁=2𝑀−1)2𝑀𝜋𝑀(2𝑀)(2𝑀−2)…4⋅2𝑎2𝑀(𝑁=2𝑀)

がわかる。 なおこれはガンマ関数Γ(𝑠)を使えば、Γ(𝑠+1)=𝑠Γ(𝑠), Γ(1)=1, Γ(12)=𝜋より、

vol(𝐵𝑁(𝑎))=𝜋𝑁2Γ(𝑁2+1)𝑎𝑁

と表すことができる。

ガウス積分

ガウス積分とはガウス関数の広義積分

𝐼=∫−∞+∞exp(−𝑥2)d𝑥=∫−∞+∞𝑒−𝑥2d𝑥=𝜋

のことである。

ここでは重積分の極座標変換を用いたガウス積分の計算を紹介する。 まず、重積分にするためにガウス積分の二乗を考えると

𝐼2=∫−∞+∞exp(−𝑥2)d𝑥∫−∞+∞exp(−𝑦2)d𝑦=∫ℝ2𝑒−𝑥2−𝑦2d(𝑥,𝑦)

となる。 ここで極座標変換𝑥=𝑟cos𝜃,𝑦=𝑟sin𝜃をするとヤコビアンは𝑟で𝑥𝑦平面でのℝ2(正確には面積零集合である𝑥軸の0以上の部分を除いたもの)は𝑟𝜃平面での(0,∞)×(0,2𝜋)に対応するので、

𝐼2=∫ℝ2𝑒−𝑥2−𝑦2d(𝑥,𝑦)=∫0∞∫02𝜋𝑒−𝑟2𝑟d𝜃d𝑟=2𝜋∫0∞𝑟𝑒−𝑟2d𝑟=𝜋.

以上よりガウス積分の値𝐼=𝜋を得る。 感覚的な説明としてはこの通りだが、細かいことを言うと広義累次積分の定理が使えるのは広義重積分が収束する場合なので、 先に広義重積分を極座標変換で収束することを示しておく方が厳密な議論としては適切である。

この他にも𝑥>0を固定した時の𝑦=𝑥𝑠という変換により

𝐼2=2∫0∞∫−∞+∞𝑒−𝑥2−𝑦2d𝑦d𝑥=2∫0∞∫−∞+∞𝑒−(1+𝑠2)𝑥2𝑥d𝑠d𝑥.

ここでフビニの定理より

𝐼2=2∫−∞+∞∫0∞𝑒−(1+𝑠2)𝑥2𝑥d𝑥d𝑠=∫−∞+∞11+𝑠2d𝑠=𝜋

となる。

ベータ関数

ガンマ関数が階乗の拡張だったように、二項係数の拡張がベータ関数である。 ベータ関数は二変数関数である。 二項係数は階乗を使って表されるように、ベータ関数𝐵(𝑥,𝑦)はガンマ関数Γを使って

𝐵(𝑥,𝑦)=Γ(𝑥)Γ(𝑦)Γ(𝑥+𝑦)

となるように設計される。 実際のところ上記をベータ関数の定義としても良いが、ここでは以下のようにして定義する。

定義 1 (ベータ関数)

二つの正の実数𝑥,𝑦に対して積分

𝐵(𝑥,𝑦)=∫01𝑡𝑥−1(1−𝑡)𝑦−1d𝑡

を対応させる関数をベータ関数という。

0<𝑥<1または0<𝑦<1の場合、この積分は広義積分となるが𝑡=0,1の周辺で𝑡の−1より大きい次数なので積分は常に収束し、ベータ関数は(𝑥,𝑦)∈(0,∞)2で定義される。

ここで𝑡=cos2𝜃と置換することで

𝐵(𝑥,𝑦)=2∫0𝜋2cos2𝑥−1𝜃sin2𝑦−1𝜃d𝜃

であることに注意する。

定理 2 (ベータ関数とガンマ関数)

𝑥,𝑦>0に対して

𝐵(𝑥,𝑦)=Γ(𝑥)Γ(𝑦)Γ(𝑥+𝑦)

が成り立つ。

証明

ガンマ関数は𝑡=𝑢2と置換し

Γ(𝑥)=∫0∞𝑡𝑥−1𝑒−𝑡d𝑡=2∫0∞𝑢2𝑥−1𝑒−𝑢2d𝑝

であることに注意する。 よって、

Γ(𝑥)Γ(𝑦)=4∬[0,∞)×[0,∞)𝑢2𝑥−1𝑣2𝑦−1𝑒−𝑢2−𝑣2d(𝑢,𝑣)

である。 ここで極座標変換𝑢=𝑟cos𝜃, 𝑣=𝑟sin𝜃することで

Γ(𝑥)Γ(𝑦)=4∫0∞∫0𝜋2𝑟2𝑥+2𝑦−1cos2𝑥−1𝜃sin2𝑦−1𝜃𝑒−𝑟2d𝜃d𝑟=Γ(𝑥+𝑦)𝐵(𝑥,𝑦)

を得る。

ディリクレ積分

条件収束するシンク関数の広義積分の値は

∫−∞+∞sinc𝑥d𝑥=∫−∞+∞sin𝑥𝑥d𝑥=𝜋,∫0∞sinc𝑥d𝑥=∫0∞sin𝑥𝑥d𝑥=𝜋2

であり、ディリクレ積分として知られている。 ここではディリクレ積分の値を一様収束を使った議論で導出する。 本節の執筆にあたっては<r_o08> を参考にした。

まず、𝑥≠0に対して

∫01cos𝑥𝑦d𝑦=[sin𝑥𝑦𝑥]01=sin𝑥𝑥=sinc𝑥

であることに注意する。 さらにこの式は𝑥=0でも、sinc𝑥=1なので、成立する。 そのためディリクレ積分は累次積分

∫0∞sinc𝑥d𝑥=∫0∞∫01cos𝑥𝑦d𝑦d𝑥

となることから積分の順序交換をしたいが、この積分領域[0,∞)×[0,1]上の広義積分は絶対収束しないので直接は利用できない。 そこで常套手段として𝑥→∞で早く減少する𝑒−𝑎𝑥 (𝑎>0)を付け加えた重積分

𝐼=∬[0,∞)×[0,1]𝑒−𝑎𝑥cos𝑥𝑦d(𝑥,𝑦)

を代わりに考える。 この積分は

∬[0,∞)×[0,1]|𝑒−𝑎𝑥cos𝑥𝑦|d(𝑥,𝑦)≤∬[0,∞)×[0,1]𝑒−𝑎𝑥d(𝑥,𝑦)=∫0∞𝑒−𝑎𝑥d𝑥=1𝑎<∞

なので、広義積分可能である。 先に𝑥で積分することを考えると𝑏∈[0,1]に対して

∫𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥d𝑥=−1𝑎𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥−𝑏𝑎∫𝑒−𝑎𝑥sin𝑏𝑥d𝑥=−1𝑎𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥+𝑏𝑎2𝑒−𝑎𝑥sin𝑏𝑥−𝑏2𝑎2∫𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥d𝑥

より

∫𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥d𝑥=−𝑎𝑎2+𝑏2𝑒−𝑎𝑥cos𝑏𝑥+𝑏𝑎2+𝑏2𝑒−𝑎𝑥sin𝑏𝑥+𝐶

なので、

𝐼=∫01∫0∞𝑒−𝑎𝑥cos𝑥𝑦d𝑥d𝑦=∫01𝑎𝑎2+𝑦2d𝑦=arctan1𝑎=𝜋2−arctan𝑎,

つまり

∫0∞𝑒−𝑎𝑥sinc𝑥d𝑥=𝜋2−arctan𝑎

を得る。 ここで𝑒−𝑎𝑥sinc𝑥は(𝑎,𝑥)∈[0,∞)×ℝ上の連続関数で、|sinc𝑥|≤1よりワイエルシュトラスのM判定法から左辺の広義積分は𝑎∈[0,∞)について一様収束するので、収束先も連続関数であることから

lim𝑎→0∫0∞𝑒−𝑎𝑥sinc𝑥d𝑥=∫0∞sinc𝑥d𝑥=𝜋2

を得る。

上記の方法は𝑎,𝑥,𝑦という三つの変数の組み合わせをうまく取り替えることでディリクレ積分を計算したが、𝑥>0に対して

∫0∞𝑒−𝑥𝑦d𝑦=1𝑥

であることに注目するとディリクレ積分は累次積分

∫0∞∫0∞𝑒−𝑥𝑦sin𝑥d𝑦d𝑥

の積分の順序交換に帰着される。 これは𝑡>0を固定すると

∫0𝑡∫0∞|𝑒−𝑥𝑦sin𝑥|d𝑦d𝑥=∫0𝑡1𝑥|sin𝑥|d𝑥≤∫0𝑡d𝑥=𝑡<∞

より、積分の順序交換により

∫0𝑡∫0∞𝑒−𝑥𝑦sin𝑥d𝑦d𝑥=∫0∞∫0𝑡𝑒−𝑥𝑦sin𝑥d𝑥d𝑦=∫0∞[−𝑒−𝑥𝑦1+𝑦2(𝑦sin𝑥+cos𝑥)]𝑥=0𝑡d𝑦=∫0∞(11+𝑦2−𝑒−𝑡𝑦1+𝑦2(𝑦sin𝑡+cos𝑡))d𝑦=𝜋2−∫0∞𝑒−𝑡𝑦1+𝑦2(𝑦sin𝑡+cos𝑡)d𝑦

あとは𝑡→∞として最後の積分項が0に収束することを示す。 実際、

|∫0∞𝑒−𝑡𝑦1+𝑦2(𝑦sin𝑡+cos𝑡)d𝑦|≤∫0∞𝑒−𝑡𝑦1+𝑦2|𝑦sin𝑡+cos𝑡|d𝑦≤∫0∞𝑒−𝑡𝑦1+𝑦2d𝑦≤∫0∞𝑒−𝑡𝑦d𝑦=1𝑡→0

であるので、 ディリクレ積分とその収束の速さ

∫0∞sinc𝑥d𝑥=𝜋2,|∫0𝑡sinc𝑥d𝑥−𝜋2|≤1𝑡

が正当化される。

フレネル積分

次の条件収束する広義積分とその値

∫−∞+∞sin𝑡2d𝑡=∫−∞+∞cos𝑡2d𝑡=𝜋2,∫0∞sin𝑡2d𝑡=∫0∞cos𝑡2d𝑡=12𝜋2

をフレネル積分という。 𝑥=𝑡2と置換することでこの積分は

∫0∞sin𝑥𝑥d𝑥=∫0∞cos𝑥𝑥d𝑥=𝜋2

に帰着される。 ここではこのフレネル積分の値をディリクレ積分の値の二つ目の導出法を参考に計算する。 本節も<r_o08> を参考にした。

まず、ガウス積分により𝑥>0に対して

∫0∞𝑒−𝑥𝑦2d𝑦=𝜋21𝑥

であるから

∫0∞sin𝑥𝑥d𝑥=2𝜋∫0∞∫0∞𝑒−𝑥𝑦2sin𝑥d𝑦d𝑥

となる。 これはやはり𝑏>0を固定すると

2𝜋∫0𝑏∫0∞|𝑒−𝑥𝑦2sin𝑥|d𝑦d𝑥=∫0𝑏|sin𝑥|𝑥d𝑥≤∫0𝑏𝑥d𝑥=23𝑏3<∞

なので、積分の順序交換により

∫0𝑏sin𝑥𝑥d𝑥=2𝜋∫0𝑏∫0∞𝑒−𝑥𝑦2sin𝑥d𝑦d𝑥=2𝜋∫0∞∫0𝑏𝑒−𝑥𝑦2sin𝑥d𝑥d𝑦=2𝜋∫0∞[−𝑒−𝑥𝑦21+𝑦4(𝑦2sin𝑥+cos𝑥)]𝑥=0𝑏d𝑦=2𝜋∫0∞(11+𝑦4−𝑒−𝑏𝑦21+𝑦4(𝑦2sin𝑏+cos𝑏))d𝑦=𝜋2−2𝜋∫0∞𝑒−𝑏𝑦21+𝑦4(𝑦2sin𝑏+cos𝑏)d𝑦.

ここで𝑏→∞において

|2𝜋∫0∞𝑒−𝑏𝑦21+𝑦4(𝑦2sin𝑏+cos𝑏)d𝑦|≤2𝜋∫0∞𝑒−𝑏𝑦2d𝑦=1𝑏→0

なので、フレネル積分とその収束の速さ

∫0∞sin𝑥𝑥d𝑥=𝜋2,|∫0𝑏sin𝑥𝑥d𝑥−𝜋2|≤1𝑏

を得る。